海上自衛隊のインド洋上の給油活動が2月から再開される。「敵前逃亡」から3ヶ月、日本の国際信用・信頼は下落した。国の政情によって国際協力が中止になるとは信頼に足りない国だという印象を与えてしまった。インド洋上での給油活動は民主党の小沢一郎代表が言うように「戦争の一端を担う」ものである。だが、国連決議に基づいて国際協力・国際貢献が要請される。9・11以来自由諸国対テログループの戦争が継続し、アフガニスタンでの対テロ活動には多くの国々が参加している。日米同盟を基軸とする日本も参加せざるを得えない。そこで考え出されたのが「テロ特別措置法」であり、今回の「新テロ特別措置法」である。日本にとって国家目標を果たす一つの重要な法案であった。
この新テロ法再可決(1月11日)について野党側は「暴挙だ」と非難し、新聞も「強硬策だ」と批評する。憲法通りに事を運んでいるのを非難するのはおかしい。そのうえ「表現」がどぎつい。民主党の鳩山由紀夫幹事長の談話「衆院は郵政解散による議席だ。直近ではない民意で可決した。廃案にすべきで、再可決という暴挙に強い憤りを覚える」(毎日新聞)。どうも民主党の鳩山幹事長は参議院と衆議院の権能を同じと考えておいるようだ。参議院で野党が過半数を占めているので錯覚されたのであろうか。
憲法59条(法律案の議決、衆議院の優越)の2項は「衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案(新テロ泰作特別措置法がこれに当たる)は衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決した時は、法律となる」と定めてある。政府はこの憲法の規定通りの事をしたにすぎない。この「再可決」が57年ぶりの珍しい出来事だとしても別に法律の違反したわけではない。「暴挙」とは「@乱暴な行い。不法な行いA一揆を起こすこと。暴動」(広辞苑)をさす。再可決は暴挙とは無縁である。
「直近ではない民意」。その気持ちは十分わかる。だが参議院と衆議院はその権能が平等でなく、違うのだ。ともに有権者によって選ばれた議員であるが、衆議院は解散があるし、しかもいつ解散なるかもしれないと心配しなくてはならない。また議員の任期も参院より短くなっている。だから衆院のほうがより強く、その時々の国民の意思を代表しうるものと考えているのが59条の趣旨だ。この考えによって国会の権能のうちその中心となる基本的な事柄(予算・条約の締結・内閣総理大臣の指名など)について、衆院に優越的な地位を与えている(林修三著「憲法の話」第一法規出版)。
民主党ももう少し大人になれ。時代は二大政党制を目指している。謙虚に振る舞うことが肝要である。参議院での優位がことごとく民主党の行動・表現に表れている。有権者には時に傲慢と映る。私は今回の再可決を「非常手段」とは考えない。国が取るべき国家目標の一つを果たす重要法案成立のために当然取るべき行動だったと思う。 |