2008年(平成20年)1月10日号

No.383

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競馬徒然草(128)

―「初心者」の話― 

 俳句を作り始めた人がいる。「ひまだから、何かしようと思った」というのが理由だ。「手軽にできそうだと考えた」と。俳句について多少の知識は持っていたが、実際に作るとなると、うまくできない。どう作ったらいいのか、分からないので困っている。こんな場合、俳句に詳しい人なら、何から教えるだろうか。
 やはり歳をとった人だが、競馬を始めた人がいる。実況放送を聴いたり、テレビを見ているうちに、馬券を買いたくなったのだ。だが、実際に買うとなると、どう買ったらいいのか分からないという。競馬に詳しい人なら何から教えるだろうか。
 このような初心者の素朴な質問を、ベテランと見られる人にぶつけると、こんな答えが返ってきた。「自分では分かっているつもりでいたが、本当は分かっていないのかもしれない」と。これは正直なところだろう。「分からない」と悩む人に、適切なアドバイスをするというのは「大変なこと」といえるようだ。「例えば、暮れの有馬記念。マツリダゴッホという馬をアドバイスできた人は、どのくらいいただろうか」。騙された思いの人が多いようだ。
 去年は人や世間を騙す事件が多かった。偽装表示の類だけでも、10大ニュースを挙げるのが難しいほどだ。競馬ファンのひとりが、「馬が人を騙すというのはどうかね」といった。「騙されてばかり」という嘆きには、誰もが「ごもっとも」と同感の意を示した。馬が騙したわけではないが、馬券が外れると「騙された」という思いが強いものだ。これまた初心者の域を出れないでいるというべきだろうか。

( 新倉 弘人)

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