2007年(平成19年)3月20号

No.354

銀座一丁目新聞

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茶説

けつちやくせぬに船頭掘へつけ

牧念人 悠々

 江戸川柳に「けつちやくせぬに船頭掘へつけ」(「誹風・柳多留・九編」浜田義一郎・佐藤要人監修・八木敬一校注)この意味は「隅田川で船遊びを楽しんでいる連中が吉原へ遊びにいこうという相談がまだ結論が出ていないうちにさっさと船頭が山谷塀へ船をつけてしまう。どうせ衆議一決、行くことは船頭には分かりきっている」である。男のさがはどうにもなりませんな。昔から男も女もこういう問題はあからさまに表には出さないのを建前とした。
 馬鹿正直な日本人はこの問題を出されるとシドロモドロになる。すると余計にかんぐられてしまう。アメリカでも話題になっている「慰安婦」問題。民主党のマイク・ホンダ下院議員(65)が民主、共和両党の議員6名とともに第二次大戦中の慰安婦問題について日本政府の謝罪を求める決議案を提出した(1月31日)。拘束力のない決議案であるが、日本の新聞もこれを伝えるから騒ぎとなる。「拉致、拉致・・」と日本人が叫ぶが、「では、日本人のモラルはどうなっているの」と世界から問われかねない。
 問題の一つは「従軍慰安婦」という言葉。「従軍」という以上国の関与や強制力を思わせる。戦争中「従軍記者」「従軍看護婦」の言葉はあった。実際に存在した。「従軍慰安婦」という言葉はなかった。存在しなかったからである。この言葉は昭和48年出版された「従軍慰安婦」(千田夏光著)からいわれだした。虚言である。産経新聞を除いて新聞がこの言葉を平気で使っているのは実態を知らないからである。日本では買春が禁止されるまで非公認の娼家を含めて民間人が営業をしていた。その場所も前線から遠くはなれた大きな町にあった。けして軍人占用のものではなかった。下院公聴会で証言した女性に何処で働いていたか聞けば軍が関与したかどうか、その実態が分かるはずである。
 次が国の関与があたっかどうの問題である。毎日新聞は慰安婦の募集、移動、管理に軍が深く関与していたのは資料から明らかである(3月16日「記者の目」)という。その資料を見せて欲しい。たしかに軍が慰安婦からその生活実態を知るためアンケート調査をしたという話を聞いた。それは業者が誘拐まがいの事をしたり虐待をしたりしているという噂があったためであった。慰安婦の募集、移動、管理はあくまでも業者の仕事である。兵隊のためにと軍が便宜を業者に与えたことは想像に難くない。それは関与ではなく便宜供与である。強制連行を認めた河野洋平官房長談話(平成5年8月)は明らかに間違いである。そのような事実はない。逆に「河野談話」が強制連行の唯一の証拠になっていると指摘する識者もいるぐらいである。安倍晋三首相が「強制性を裏づける証拠はなかった」という発言(3月1日)は正しい。だが「河野談話」を継承するというのは米国では理解し難いであろう。米紙は「慰安婦」を「性の奴隷」と訳したいるのだから反発をさらにあおる結果となっている。
 アメリカ下院議員ホンダさんに次の話を聞かせたい。徳川無声の「無声戦争日記(七)」(中公文庫)の昭和20年9月27日(木曜日 曇 夜雨)によると「夕方5時になるとA兵(アメリカ兵のこと)の行列がものすごくエンエンとできあがる。スン(即ちチョンの間)が50円、泊まりが240円の定価。妓一人で毎夜平均8人ぐらいを引き受ける。大抵はうんざりしてしまう。中には1時間で5人かたずける妓もあり。ピストル騒ぎが3度ほどあり、以来憲兵が出張、夜10時を過ぎるや、各待合を点検し、残留の兵あらば、追い返す。追い返したる後、憲兵ももまた金を払いて、寝て行くもあり・・・」この場所は日本人は「OFF・LIMIT」であった。GHQの指令であった。憲兵がいるところみれば、米軍の強制力が強かったとみてよい。米軍を相手にした日本の妓は「大和撫子の特攻隊」の気持ちであったようである。ホンダ議員はこれでも「慰安婦」を「性の奴隷」とさげすむか。 日本の妓は慎み深いだけに米国に「占領中の慰安婦問題」について謝罪を求めることはしない。謝罪を求めた話など聞いたこともない。このようなことは表沙汰にすることではない。表面化するのは得てして別のたくらみがあるからであろう。
 吉原の雪は風情があたという。
 「雪の日に五両くすねてむす子出る」(前掲の書より)
行く先はもちろん吉原だ。野暮なことを聞くものではない。

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