安全地帯(165)
−信濃 太郎−
対立は調和をもたらす
今年の7月22日(投票予定日)の参院選挙が自民党対民主党の「天下分け目の戦い」となる。民主党が政権を取るためにはこの選挙にまず勝たねばならない。そのチャンスは十分ある。「民主主義とは政権を交代させる」ことである。「対立は調和をもたらす」という諺もある。日本では1993年8月、非自民の8党派が細川連立政権を樹立して38年間続いた自民党一党独裁の幕を閉じさせただけである。それも僅か一年に過ぎなかった。日本では民主主義がなじまないのか。
日本の有権者は賢明だと思う。これまでの投票行動を見れば、自民党にその都度それなりの痛みを与えている。それが「無党派層」である。有権者の30lから40lを数える。投票率が高くなればなるほど政党に与える打撃がひどくなる。「市場原理主義」が横行し「弱肉強食」となり「格差社会」を現出している。国内の道議が荒廃、親殺し、子殺しが頻発している今の時代、民主党に情勢は有利に働いているといわざるを得ない。イギリス、アメリカでは経済状態が悪い時、政権党が有権者か見放されるのを常とする。
民主党の党首、小沢一郎は自民党のドンを気取る森喜朗元首相や青木幹雄参院議員会長より格上である。森は5歳、青木は8歳それぞれ小沢より年上だが、森は小沢が幹事長時代、議院運営委員長に過ぎない。青木にしても党、経世会では小沢より格下である。小沢は選挙上手といわれる。選挙上手といっても今のところ衆院選千葉7区補選で勝利しただけで、沖縄知事選、神奈川18区補選、大阪9区補選では負けている。それでも自民党は小沢が怖いらしい。
小沢はアメリカ一辺倒の外交から中国を交えた正三角形外交を展開したいと言っているという。代表就任早々中国訪問して中国首脳陣と会談したのはその現れである。だが、けして日米同盟を軽視しない。自分が作った細川内閣が倒れた最大の原因が「対米関係」にあったことを知っているからである。1994年2月、細川首相が訪米した際、日中関係でクリントン大統領と対立、アメリカ政府の逆鱗にふれたからである(森田実著「小沢一郎入門」三笠書房)。
小沢一郎が民主党の代表に就任したとき、私は「小沢は死ぬに気になった」と思った。心臓に持病を抱え、64歳の今、宰相までの時間はあまりない。勝負どころではある。天下分け目の戦い「関ヶ原の合戦」では徳川家康は豊臣側に裏切り者が出て勝利した。小沢の戦略、戦術は、奇策を弄するまでなく正攻法で勝てるのではないか。そのためには有権者の政治への関心を増すことである。それが民主主義の最大の成果である。
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