2006年(平成18年)10月20日号

No.339

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競馬徒然草(94)

―ハルウララの引退― 

 高知競馬のアイドルホースとして人気の高かったハルウララ(牝10歳)が、未勝利のまま遂に現役引退となった。勝てないことが魅力となった異色の馬だった。98年11月17日の1レースでデビュー以来、1度も勝てず、113連敗の記録を立てていた。最後に出走したのは04年8月22日の第9レース「ハルウララ・チャレンジカップ」。それから2年以上が経過。事実上の引退状態にあった。
 高知競馬が属する地方競馬全国協会(地全協)では、1年以上出走していない馬を半期(4月、10月)ごとにリストアップし、関係者に現役続行の意思があるか確認する。ハルウララの場合、今年4月1日時点では登録は継続されたが、遂に10月1日付の登録抹消馬として公示され、正式引退となった。
 勝てないながらも懸命に走る姿が共感を呼んで、03年末から翌年にかけてブームを巻き起こし、日本中のファンを熱狂させた。JRAの武豊騎手が騎乗した04年3月22日のレースでは、馬券が異例の全国発売までされ、5億円以上の売り上げを記録。レースでは負けて106連敗とはなったが、海外メディアを含め、86社350人の報道陣が集まったほどだった。高知競馬としても12年ぶりの黒字で、売り上げ減少で経営悪化をたどる地方競馬の中でも、希望を抱かせる異色の存在だった。
 馬は7歳ぐらいまでに引退するのが普通で、10歳での引退例は殆ど皆無に近い。2年前に牧場で休養の形をとっていたが、あのときが引退の時期だったと思われる。関係者のイザコザが時期を誤らせた。馬にとっては気の毒なことだった。名馬の場合とは異なる、ひとつの別の引退をそこに見ることが出来る。

( 新倉 弘人)

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