2006年(平成18年)5月1日号

No.322

銀座一丁目新聞

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安全地帯(142)

信濃 太郎

 「世界の色・日本の色」さよなら写真展

 ジャパン・フットクラブ「さよなら写真展」を見る(4月13日から18日・新宿野村ビル1階)。最期の写真展というので43人の85葉の”世界の色””日本の色”が飾られた。会員が思いを込めてシャッタ―を切った作品にいささか感動した。昭和56年に設立されたこのクラブは平成2年にリニュアルされ平成17年末で幕を閉じた。15年間「写真を楽しく撮ろう」を合言葉に、会員は250人を数える。海外14回,国内20回,近隣,日帰りの旅39回を重ね18回の写真展を開催した。私は友人、霜田昭治君の進めで5,6年前から鑑賞してきた。多くの作品が風景を撮っているのに霜田作品は必ず『人間』が入っているのに感心する。今回の2枚も何れも人物がいる。チェコ・プラハで撮影した「指定席」とフランス・オンフルールの「わが家のクイーン」である。「指定席」はヴルタヴァ川の岸辺のベンチに憩う女性と愛犬を写す。女性の右脇にリュックがあり,スニ―カにズボン、ランニングシャツ,長い髪、頭にサングラスを置く。割にラフないでたちである。宣伝らしいパンフを読む。白に黒の半纏のある犬は舌を出して主人の指示待ち顔である。背後に船が写っている。たしか「ジャズ・ボート・クルーズ」と「コーヒーとケーキ付きクルーズ」があったはずである。2時間ぐらいの行程であった。気温は20度ぐらいであろうか、日本と同様四季のあるチェコはどの季節も美しい。「指定席」に坐る女性に愛犬は「クオ・ヴァディス」と聞きたげなようにも見える。「わが家のクイーン」は港町オンフルールのほほえましいスナップ。祖父、夫婦、孫娘3代の旅であろうか。ヘソ出しでさかさまの孫娘が一番世の中が、そしてこのオンフルールの街が見えているのかもしれない。だから「クイーン」なのである。この街が生んだ有名な作曲家エリック・サティの「新・子供の音楽集」に「とてもすてきなおんなの子」がある。サティがすでに死んでから80年もたつが12歳まで住んだという生家は今も残っている。「年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず。オンフルールの空の雲一片、流れて悠々・・・」素晴らしい写真が生まれても不思議はない。今回は13点の人物が含まれている写真があり、私は時間をかけて楽しく拝見した。

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