2006年(平成18年)4月20日号

No.321

銀座一丁目新聞

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花ある風景(235)

並木 徹

イッセー尾形の「英語教師」に涙あり

  第14回スポニチ「文化藝術大賞」グランブリは一人芝居のイッセー尾形(54)に贈られた(4月11日・東京プリンスホテル)。一人芝居のフロンティアとして25年に及ぶ業績、素人芝居を体験させる地方公演の企画など旺盛な演劇活動が評価された。晴の舞台ではワイシャツ姿で「英語教師」を演じた。5分間のお芝居であったが、英語の発音が大連2中時代の磯西文蔵先生に似ているのに気がついた。5年生の夏の英語の時間であった。磯西先生は教室に入ってくるなり上着を取ってワイシャツ姿で授業をはじめた。私は頭にきた。「神聖なこの教室で生徒たちはみんな真剣に授業を受けているのに自分だけが暑いからといって上着を脱ぐなどとはとんでもない」と思った。すると、「リーダーの次の個所を読め」と指名された。私は立ったまま無言で暗黙の抗議を示した。おかしいと気がついた先生が「どうして読まないのか」と聞いた。私はその理由を説明、先生だけが上着を脱ぐ不当を訴えた。すると先生は「俺が悪かった。肥っているから暑がりなんだ。みんなも脱げ」とあっさり謝った。真剣に英語を発音するイッセー尾形と磯西先生がダブってきて目頭が熱くなった。戦後大連から大阪に引き揚げてこられたが再会の機会はなかった。
 イッセー尾形は言う。「世の中はネタの宝庫。歩いていても電車に乗っていてもゴロゴロ転がっている」新聞のネタもこれと同じである。それがネタと気がつく新聞記者が少なくなった。気がつくには日頃からの勉強が大切である。イッセー尾形にしても同じである。人をよく観察して面白いしぐさ、おかしな行動を見て、それを膨らまして様々な演技に取り入れるのである。だから今日のイッセー尾形がある。この日、イッセー尾形からいろいろのことを教わった。

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