2006年(平成18年)4月1日号

No.319

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花ある風景(233)

並木 徹

親・子・孫三世代家族展を見る

 銀座の画廊で「親・子・孫 三世代家族展」を見る(3月27日・NICHE GALLARY)。60余年の付き合いながら渡辺端正君のこの企てには驚いた。絵、書、刺繍など家族10人35点の作品に「家族の絆」をまざまざと感じ入った。画廊の奥まったところに夫人迪子さんの書がある。「感謝」「翰墨遊戯」「一穂青燈万古心」とある。今回の展来会の趣旨を表現している。「皆様ご来場していただいて有難うございます。家族の筆と墨の手慰みです。みんな一所懸命に書いたものです。わたしたち家族の心は何時までも変わりません」と私は解釈した。書は墨痕鮮やかである。友人の野地二見君は激賞していた。私は吸い取られるような優しさを感じた。
 入り口の真正面に渡辺君の会心作「カレル橋」の絵がある。2003年2月有楽町の交通会館で開いたグループ展に出品した作品である。朝もやの漂う中に人影が7つ。全長520メートル、巾10メートル。橋の欄干には聖人やチェコの英雄など30の像があるはずだが僅かに数体が黒く見える。なんとも言えない静寂さが伝わる。定年退職後ボツボツはじめた絵だそうだが、その絵心はいたいほどわかるる。その時の展覧会の出品作品41点中人物を描いたのは5点に過ぎない。そのうち2点が渡辺作品であった。「絵はその人の性格を現す」とすれば渡辺君の感覚は若くて瑞々しい。長女の三原昌子さんの長男大輔君を紹介された。中央大学の1年生でラグビーの選手である。ポジションは「スタンドオフ」という。墨絵の「竹」と書「作」を出している。書は小学校時代の作品というが、なかな器用なの字である。スタンドオフに向いているかもしれない。ラグビー好きな私はその名前を記憶することにした。プロ顔負けの写真をとる同期生の霜田昭治君は、ギターを小脇に抱えた若者を描いた迪子さんの水彩画を見て「旦那より奥さんのほうがうまいんじゃないか」と感想を小声で漏らした。私も同感の意を表した。この家族展は渡辺君の知人、NICHE GALLERY代表、西村富弥さんの協力によるもので、「上手下手ではなく、一つの『家族』に点る温かな『美』と『優しさ』こそ渡辺家に留まらず、無数の星のように灯ることを私たち画廊一同、希望してやみません」と語っている。同期生の友情は60年前と同じく変わらなかった。野地君、霜田君のほか吉満秀雄、別所末一、西村博、門田省三、荒木盛雄、富永実樹男、佐藤茂雄、辻村吉彦、前沢功・同夫人、横森精文夫人の諸嬢、諸兄が姿を見せた。

 

撮影:霜田昭治

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