競馬徒然草(73)
―個体識別」にMC導入―
競走馬の個体識別法として、07年の産駒からマイクロチップ(MC)が、導入されることになった。現在は毛色や白斑など馬体の特徴で識別が行われているが、それに代わるより確実な方法として期待される。英、愛、仏、豪州などではすでに導入されており、競馬の国際化という流れに沿うものといえる。
MCは固有の番号が書き込まれた直径2ミリ、長さ14.6ミリの集積回路(IC)チップ。埋め込み時期は生後6カ月以内で、馬のタテガミの生え際に埋め込まれる。埋め込みは生産者から依頼された獣医師によって行われる。07年以降に生まれた産駒から、MCが埋め込まれていない馬は、中央、地方を問わずレースに出走できなくなる。この方式の導入のため、日本軽種馬登録協会、日本中央競馬会、地方競馬全国協会の馬の登録に関する規則も改定された。
今回のMC導入は、何事につけICの時代になったと感じさせる。動物の世界では牛の病気に端を発し、いち早く病原の牛を特定する必要があった。馬の場合、まだ牛のような病気の発生例はないが、万一の場合の対応を考えてのことだという見方もある。それは別として、レースへの出走馬の識別はより簡単で確実な方法となる点は大きい。
以前のことだが、レースに出走させる馬を間違えた事件があった。なぜ間違えたのか分からないが、単なるうっかりミスでは済まされないものがある。その点、MCが導入されると、馬の個体識別が容易になり、出走馬を間違えるようなこともなくなるだろう。ただし、「識別」を確認するのは人間だから、人間が確認を怠るとどうにもならない。世の中には基本的な確認を怠ったための事件は、枚挙にいとまがないのである。「怠らない人間」か「怠りやすい人間」かの判別のほうは大丈夫だろうか。 (
新倉 弘人) |