1998年(平成10年)5月20日(旬刊)

No.40

銀座一丁目新聞

 

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耳よりな話

 浜野佐知さんは30年近い歳月のなかで300本以上の映画をつくってきた。全部がピンク映画と呼ばれる作品である。21歳から映画監督を志したが、男性権力社会の象徴のような映画界で、女性を受け入れてくれる場所はここしかなかった。どうせやるならプロに徹しようと決心した浜野さんは、予算と期限を確実に守り、ヒット作を次々に生み出して、ピンクの女王と呼ばれるまでになった。ピンク映画にも女性の視点はいかせる、浜野さんはそう信じてこの道を歩きつづけたのである。

 その浜野さんの願いは、いつか一般の映画館で上映される作品を撮ることだった。それが多くの女性たちの応援で実現することになった。「尾崎翠を探して――第七官界彷徨」。

 鳥取県出身の女性作家、尾崎翠を主人公に、現代と尾崎翠が生きた昭和初期という時代、幻の名作といわれる彼女の代表作『第七官界彷徨』が交錯する、ふしぎな世界が描き出させることになっている。

 去年4月23日、製作発表の記者会見が東京ウィメンズプラザで行われた。配役がすごい。尾崎翠には白石加代子が扮する。浜野さんは、たまたますれ違った白石さんを、白石さんとはしらずに、尾崎翠はこの人以外にないと追いかけたのだという。舞台で多忙をきわめる白石さんも、浜野さんが発するオーラの強さにひかれて出演を決めた。吉行和子、宮下順子、白川和子、横山道代、原田大二郎らのベテラン俳優も無報酬に近い形で出演する。浜野さんの実力である。フィクション部分は柳愛里など若手スターたちが演じる。

 スタッフも音楽の吉岡しげ美、美術の星埜恵子、記録 大和屋叡子ら一流プロの女性たちがそろった。どんな作品ができるのだろう。浜野さんの長年の夢と誇りをのせて、「尾崎翠を探して」は5月16日、鳥取県でクランクインした。(Y.O)

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