2005年(平成17年)10月1日号

No.301

銀座一丁目新聞

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山と私

(22)
国分 リン

−雪の唐松・五竜岳−

 ゴールデンウイーク後半、雪山へ登りたくてスポニチ登山学校のアドバンスコースへ申し込みをした。思えば一昨年5月に亡き友Fさんとともに助け合って登った山である。
2日夜発、このバスの中の睡眠が翌日の体調に影響する。
 目覚めると、快晴である。ゴンドラとリフトを2本乗り継ぎ村営八方池山荘(1,800m)へ着いた。前回は大勢の登山客がいて行列をした記憶があったが、今回は意外に少ない。周りは別世界のように真っ白な雪の世界である。またここへ来たという実感がわいた。アイゼンをつけグループ毎に出発。いよいよ本格的な登りになる。素晴らしい眺めで向かって右側は立山3山、左は鹿島槍ヶ岳が大きな姿を現している。登りのつらさを忘れさせてくれる眺望である。第3ケルンで休憩、カメラタイム、八方池は雪に覆われ、真正面に不帰ノ嶮が黒々と大きな三角錐を見せてくれた。ダケカンバの木々が雪の上に模様を描き、とても印象に深い。雪を踏みしめ眺めがいいのでルンルン気分で、丸山(2,460m)へ一休みをしたら友の顔が浮かび、一緒に登っているのを感じる。もう少しのがんばりと1歩1歩進む。ふっと前を見ると屋根が見え唐松山荘(2,520m)だ。
 荷物をデポして唐松岳(2,696m)を目指す。ゆっくりでも30分もかからず頂上だ。バンザイ!仲間のMさんが鯉のぼりを頂へ泳がす。360度の展望で荒々しい不帰ノ嶮と白馬岳が見え、また黒部川をはさんで剣岳から立山の稜線を見せてくれた。素晴らしい景色にかんどうをし、胸が震えた。
 翌日4時半にご来光を撮るためにカメラを持ち、写真仲間のS君とのぼり、頂上で寒さをこらえて待つと赤く燃えるような太陽が顔を出した。やったありがとうと興奮してシャッターを押した。
 
 唐松岳を後に五竜岳をめざす。夏場は2時間半の岩稜歩きでまたザラザラした危険箇所が続く登山道ですが、まして雪がついた岩場である。前回を思い出し、慎重に最低鞍部まで下る。「下りのほうが危険です。十分気をつけて」と先生方の緊張の声がする。最初の休憩に後ろを振り返ると今まで歩いてきた道と唐松岳のピークが見え、すごいところを歩いてきたなと思う。今日も快晴で気分も良い。まだまだかなと思っていると、屋根が見え五竜山荘(2,490m)に着く。山荘の左奥に雪がたくさんついた大きな斜面の奥が五竜岳(2,814m)だ。前回よりもズーッと雪が多い。ザックをデポしてグループ毎に先生の後から登り始める。危険箇所には先生方がザイルを張ってカバーしてくださるから、安心である。
アドバンスの雪に慣れてない人と熟練者とでは一時間のひらきがあるが、仕方がないと思う。五竜のピークも素晴らしい天気だ。ここでも鯉のぼりを泳がせた。剣岳や立山に向かって元気に泳げ、皆の健康を祈れと心が洗われ、頂は別世界を感じる。鹿島槍の北峰と南峰やいつまでも飽きることのない展望でゆっくり満足がいくまで座る。
 いよいよ急斜面の下りである。先生方のピリピリ感が伝わる。一歩誤ったら大変なのだ。
雪に慣れていないと、一歩踏み出すのが怖くて、時間がかかる。初心者の下る姿を皆がジーッと下で見守る。これがカメラードだ。尾形先生の的確なリードで無事皆下る。

 最終日、今日は遠見スキー場のアルプス平駅までひたすら下る。山荘横からの急斜面は雪の壁になっていて、前回とはまるで違う。細い急斜面の道を這うように下る。2,3度つまずき転ぶが雪が多いのですぐとまる。大変な下りであった。30分程で急勾配が終わりほっとした。大遠見山(2,106,3m)で振り返ると五竜岳の勇壮な姿が見え、昨日の感動がよみがえる。途中鹿島槍のカクネ里と北壁の迫力を実際に目にしシャッターを押す。
 スキー場に着き邪魔にならないように端を急いで下り、ゴンドラに乗り、山行は終わった。雪の状態や天候次第で山は変化するのを、実感した。また機会があったら登りたい。

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