2005年(平成17年)4月1日号

No.283

銀座一丁目新聞

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花ある風景(197)

並木 徹

寺井谷子さん「NHK俳壇」の選者を去る

 寺井谷子さんが選者として最後の出演である「NHK俳壇」を見る(3月26日午前8時教育テレビ)。この番組で寺井さんの一席はサンパウロに住む中川千江子さんの句「夕風にマンゴ落ちつぐ彼岸寺」であった。二席は「はうはうと牛の尻押し春の土」(坂田静子)。ゲストの藤田湘子(俳誌「鷹」主宰・交通ペンクラブ会員)も同じであった。三席は「希臘てふ美しき字書きぬ春の土」(上田和代)。私はどちらかというと、二席の句が好きである。寺井さんの一か月に見る応募俳句は5000句、選者であった3年間に18万句を見た勘定になる。選者の中では寺井さんはユニークであった。ゲストに直木賞作家を招いたり、中学生やど素人の元新聞記者をよんだりして話題を撒く。中でも添削は見事で好評であった。友人のひとりは寺井さんの番組だけを毎月録画して精進している。大寒の前日頂いた友の手紙に「三世代同車の旅や今朝の春」(紫微)の句があった。番組の終わりに当たって寺井さんは「俳句は面白い、日本語が持つ力を感じて欲しい」と淡々としていた。銀座俳句道場の同人のひとりは『寺井さんの言葉が胸に響きます。「やさし言葉、的確な言葉で」は永遠の宿題となりましょう』と感想を寄せた。もう一人の同人の感想は「着物と帯が素晴らしかった」。
 今年の2月ふらんす堂から「寺井谷子句集」(現代俳句文庫)が出た。この句集にはこれまでの作品「笑窪」「以為」「未来」「人寰」から句が抜き出されている。著者の俳歴のエッセイには10歳の時の吟行で「あぜ道に夕日差し入り落穂ひろう」と読んだというから末恐ろしい人であったわけである。「笑窪」が出版された時、小倉で開かれた出版パーティーで当時毎日新聞の西部本社代表であった筆者は挨拶させられた。そこで「この人は何れ日本で指折り数えられる俳人になるでしょう」といった。あれから20年。この予言が当たった。当時「自鳴鐘」に「笑窪」の俳句を独断と偏見で批評した拙文がのっている。言葉使いが新鮮で、切れが鋭い寺井さんの俳句に圧倒された記憶がある。それにしても俳句を知らないものが無謀なことをしたものである。贈られた前記の句集のとびらに谷子さんの「たましいのいくたび撓う冬桜」の句がある。厚かましくても私もこういう冬桜でありたい。昨今は「生きざまは柳か雲か風まかせ」(悠々)の心胸でもある。

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