1998年(平成10年)4月20日(旬刊)

No.37

銀座一丁目新聞

 

ホーム
茶説
映画紹介
個人美術館の旅
連載小説
ゴン太の日記帳
気軽に心理学
海上の森
告知板
バックナンバー

新山恭子の気軽に心理学(10)

「場」と「個」

新山 恭子

 私達が、何かを決める時、行動を起こす時、何を優先しているか、ちょっと考えてみましょう。日本人の場合、先ず、世間の基準と合っているか、みっともなくないかを考えてから、おそるおそる歩き出す場合が多い様です。良く子供は「皆も持っているから、やっているから」と言って、親に物をねだったり、自分のしている事を正当化してきます。 この頃の社会をみていると、大の大人が、この論法で自分の不誠実を、言い訳している事件が目立ちます。ここにはやはり、日本の国民性といって良い、横並び感覚や、自主性のなさが、浮び上がって来ます。週間や伝統、場の論理で、辛うじて、維持してきた、土台が、崩れはじめています。

 今必要なのは、個の発想、論理でしょう。「学識」は常に変化します、場での常識、時代における常識、こちらで良い物はあちらではNoという、のが常識の特性です。一つの場にしがみつくと、そこの常識だけで物事を視る様になり、バランスの悪い人格がつくり上げられます。むしろ、重要なのは「良識」(モラル)と言えます。いつの時代にあっても、どこに所属していても、その人のもつモラルが、社会を健全にするでしょう。モラルの形成を教育の中に取り入れて、核をもった人材作りが望まれます。私の師である秋山さと子氏は、実に自由な発想で、いろいろな事を、経験していました。彼女の口癖は、「何をやっても良い、でも偽善はダメよ。会話はおもしろく、でも、下ネタはずるい」でした。こういった、その人らしい規律をもつと、自由でいながら流されず、素敵に生きられるのではないかと、共感していました。

 井上ひさし氏の舞台の中で、柳町の芸者のせりふがありました。「化粧は薄く、人にこびず、芸で売る」これを聞いた時、私は、これだと、嬉しかったものです。どんな仕事も相手があり、その相手に媚びず、芸をみがいていこうと、改めて思ったものです。自分らしさは、その人特有のモラルかもしれません。自分の中心感覚を養っていくと、来る21世紀を、よりおもしろく、味わっていけるでしょう。

★新山 恭子(にいやま・きょうこ)

1948年(昭23)12月21日、東京都生まれ。東亜国内航空(現JAS)客室乗務員として勤務した後、秋山さと子氏に師事しユング心理学を研究。現在は産能大学経営開発本委嘱講師を務めるかたわら、ドリームコンサルタントとして講演、研修などで活躍。

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。
www@hb-arts.co.jp