競馬徒然草(35)
―「西高東低」に異変―
このところ競馬の世界では「東高西低」の傾向が続いていたが、異変が起きた。その1つが12月5日の阪神JF(ジュベナイルフィリーズ)。今年の2歳女王に輝いたのは、関東のショウナンパントル(吉田豊騎手、大久保洋吉調教師)。僅か1勝しただけの馬で、8番人気だった。しかも、圧倒的な1番人気だった関西のラインクラフトを破っての優勝。それだけに、この勝利の価値は極めて大きい。これまで続いてきた「西高東低」に、異変が生じたともいえる。さらに2着にも関東のアンブロワーズ(ホワイト騎手、小島太調教師)が入って、関東馬が初のワンツー。単勝1.5倍の関西馬ラインクラフトは、圧倒的な1番人気だったが3着に敗れた。
今回のショウナンパントルの優勝は、数々の記録を打ち立てることにもなった。大久保洋吉調教師にとっては、実に96年のメジロドーベル以来8年ぶりのV。関東馬としては、98年のスティンガー以来6年ぶりの優勝。国本哲秀オーナーはこのレース初制覇。8番人気の馬が勝ったのも初。1勝馬の優勝は93年ヒシアマゾン以来2頭目。まさに記録ずくめだ。
ショウナンパントルはサンデーサイレンス産駒で、北海道・白老ファーム生産。これで今年GTを4勝したことになる。来年は桜花賞を目指すことになるが、そこでも勝つようなことがあれば、さらに記録の更新となる。
振り返って見ると、「西高東低」に異変の兆しはすでに起きていた。例えば、11月13日の京王杯2歳S(GU、東京・芝1400)で勝ったのは、高橋裕厩舎のスキップジャック(勝浦騎手)。11月20日の東京スポーツ杯2歳S(GV、東京芝1800)では、国枝厩舎のスムースバリトンが優勝。ともに関東の2歳牡馬で、来春のクラシックに向けての有力馬にのし上がった。
今年の競馬も残り少なくなったが、2歳馬のナンバー1を決める朝日杯(12月12日)でも、今の勢いで関東馬の優勝に期待したい。特に関東馬では、前走スタートのまずさが祟って5着に敗れたマイネルレコルト。その雪辱に夢を賭けたいものがある。父チーフベアハートは有名種牡馬ではなく、日本での産駒にも大した活躍馬を出していない。また、マイネルレコルト自身、牡馬としては馬格が小さい馬(440キロ台)で、見栄えは立派とはいえない。だが、その根性には見るべきものがある。それだけに大一番での頑張りを見せてほしい。「山椒は小粒でも・・」の喩えもあるではないか。 (
新倉 弘人) |