競馬徒然草(22)
―当たり券の話―
「2億円を寄付した人がいるんだってね」。人が集まれば、挨拶代わりに、宝くじの1等当たり券の寄付問題が話題になる。「金持ちが金を寄付しても、別に驚かないけどね」「宝くじっていうところに、話題性があるね」。誰もが当てたいと思っている宝くじ。それも1等だ。その羨望感に似たものが、会話に滲んでいる。
当たり券は、手紙とともに福井県知事宛てに郵送されてきた。封書の裏には住所、指名が書かれていたが、実在せず、該当者もなかった。そこで県は、手紙の文面にある趣旨を尊重し、集中豪雨による被災者への見舞金として受け取ることにした。ともかく1つの美談である。ところが、詮索好きの人はいるもので、あれこれと詮索する向きがある。その1つは、「なぜ、デタラメの住所や氏名を書いたのか?」。もう1つは、「盗むか拾ったものなので、金を受け取りに行くのが怖くなって送ったのではないか?」というものなど。下手をすると、拾得物横領罪になる恐れがあるからだ。人の善意も素直に受け取られないことがある。そんな世の中を反映している。もっとも、ミステリー・マニアなら、そのくらいのことは考えるかもしれない。
ところで、実際問題として、この当たり券を換金するには、手間がかかるようだ。一般の高額当たり券の場合(例えば1000万円でも)、銀行の支店窓口へ持参すると、支店でチェックしてから本店へ送り、本店でもチェック。それから金を支店へ送り、支店から客へ連絡。それから本人が支店へ受け取りに行く。今回の場合、寄付者からの手紙も、チェックの際の重要な資料となる。高額配当の受け取りは面倒なのである。
ところで、これを馬券の配当受け取りの場合と比較してみる。例えば1000万円の高額配当でも、高額配当窓口へ行けば、その場で受け取れる。ただし、配当の受け取り期間は60日以内。以前は90日だったが、期間が短くなった。宝くじは1年間有効だから、その点が異なる。なお、今回の宝くじの当たり券は被災者への支援だったが、馬券でこのようなケースは聞かれない。配当金は、日頃の自身や家族への「支援」となっているようだ。 (
新倉 弘人) |