2004年(平成16年)7月20日号

No.258

銀座一丁目新聞

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茶説

基本動作を怠るな


牧念人 悠々

 小泉内閣の支持率がはじめて不支持率より低くなった。毎日新聞の全国世論調査によると「支持する」40パーセント、「支持しない」44パーセントである(7月19日).心すべきである。日経新聞の「交友抄」(7月13日)にこんな記事がのった。イラク復興支援群長の番匠浩一郎さんがサマワに出発する前に中谷元前防衛庁長官に「大切なことはABCだよ」といい「当たり前のことをボーッとせずにちゃんとやれ」と話したという。
 二人は防衛大学の同期生である。何事にも基本動作が大切で、それを当たり前の事として実行せよと説くわけである。ところで、政治も新聞もその基本動作を忘れている場合が少なくない。ともすれば謙虚さを忘れ現象にとらわれ時代の底流を見逃し、大局的見方を怠ってしまう。参院選の結果について神戸大教授、五百旗頭真さんが「無党派時代の二大政党化状況を迎えたこそ、この参院選に見る最大の事件なのである」(7月13日朝日新聞)と指摘した。的確な見方だと思う。昨年の11月の総選挙に生まれた二大政党志向を裏付ける結果となった。さらに五百旗頭教授は「敗者は共産党である」という。社民党は現状維持議席であった。先の総選挙の時で護憲派は歴史的大敗を喫したのである。時代の流れは明らかに改憲に大きく舵をとった。
 新聞が勝った負けたと議席の数を論じ、責任をとらないのはおかしいといきまいているがこの「無党派時代の二大政党化状況」の流をしっかりと見つめないと民主党の獲得得票数(戦擧区で自民党より224万票、比例区で434万票それぞれ多い)に幻惑されかねない。今回も無党派層の50パーセントを超える票が民 主党に流れたが、所詮浮動票は『どっと入りどっとでてゆく』。ちょっとしたことで次回は自民党に流れかねない。今回小泉首相は選挙を『改革路線への信任を国民に問うもの」と位置付けた。間違いながなかったが、有権者の「年金問題」への異常な関心に押されてしまった。有権者は何よりも「老後の不安」「負担増」を本能的に嫌う。さらに改革は具体的に目に見えないだけに不利は免れなかった。
 五百旗頭教授は「国民に対し時代の課題に対処する姿勢をどう見せるか非常に大事になってきている」という(7月14日毎日新聞)。日常生活だけでなく政治の世界でも黙っていては理解されない。ちゃんと『説明する』という基本動作を大事にすべきである。これが参院選挙の最大の教訓かもしれない。

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