2004年(平成16年)6月1日号

No.253

銀座一丁目新聞

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安全地帯(77)

−信濃太郎−

外交交渉というもの
 

 対北朝鮮外交交渉において日本人は忘れてはいけない事が二つある。日本は国際紛争解決のため行使する軍隊を持っていない。北朝鮮はテロ国家であるという二つである。北朝鮮は「公正と信義」に信頼がおけず、「専制と隷従、圧迫と偏狭」をその国民に押し付けている国である。しかも日本国民を多数拉致しておきながら未だにその人々の安否を明らかにしないでいる。そればかりでない。核開発に精を出し、国際社会から孤立している独裁国家である。
 平壌空港に小泉首相に外務次官が出向かえたのを新聞は「なめられた」と書くが、相手は非礼をあえてする心貧しい国である。日本はどこの国よりもお客様を大切に遇する心優しき国である。外交交渉は常に秘密工作や下交渉がつきものである。会談そのものがわずか1時間半で終わったからといって非難するにあたらない。日常の会議でも長時間開いたから成果が上がったというものでもない。拉致家族の人たちの期待が大きすぎた。あくまでも金正日総書記が悪いのである。死亡や行方不明とされている10人の安否は誠意さえあれば、すぐにわかるはずである。事前交渉でこの点をつめなかったのは明らかに失敗である。小泉首相に家族たちの怒りが向けられたのは当然といえる。
 人道支援名目で25万トンの米と1000万ドル相当の医薬品が贈られるが、これは明らかに5人の家族の帰国の見返りである(人道支援「反対」61パーセント・朝日新聞世論調査)。「対話と圧力」というが、日本国は誠に情け深い。人がよい。そこをつけ込まれる。今後もつけ込まれるだろう。拉致問題は北朝鮮が日本の主権を侵した事件である。これを解決するには国際法では謝罪と原状回復(拉致した人を日本に戻すこと)、それが不可能な場合は賠償金を払うのが原則である。解決しない場合は武力をもってするほかない。それほど重大な問題である。武力を行使できない以上「圧力」をかけなければいけない。北朝鮮が「日朝平壌宣言」を履行しない場合はどしどし圧力をかけるべきである。今回小泉首相が金総書記に直接「核開発の愚」を説いたのはよかったと思う。拉致問題が全面解決しない限り日朝正常化交渉は一歩も前に進めないと知るべきである。
 小泉訪朝について急ぎすぎたという批判があるが、一年八ヶ月も実現しなかった拉致家族五人が帰国したことと金総書記と直接対話が出来たことは評価してよいと思う(首相訪朝「評価」67パーセント・同世論調査)。それにしても新聞の論調と世論のギャップが大きすぎる。

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