2004年(平成16年)6月1日号

No.253

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(16)

―オークスのミステリ― 

  波乱に終わった今年のオークス。すっきりと納得できない印象を残した。こころあるファンの中には「あれは不可解だよ」「ひとつのミステリーだ」と、いう人もいる。そう受け取られてもおかしくないのが、今年のオークスだった。
 結果からいえば、単勝1.4倍という圧倒的な人気を集めたダンスインザムード(武豊)が、3着にも入れず、4着に敗れた。1着馬ダイワエルシエーロ(福永)から約4馬身差をつけられた。しかも、ゴール前では、踏ん張りも欠いて4着に落ちたのだから、これは「惨め」というほかはない。
 レースを振り返ってみると、最初の位置取りからおかしかった。3枠(5番)という絶好の枠。どの馬が逃げても、すっと2,3番手の好位置を占めることのできるスピードのある馬だ。それが中団の馬群(8番手)の中。位置取りが悪い上に、行きっ振りもおかしかった。もたもたしていた。「あれは不可解だよ」と見た人は、「早々と、これはダメだと予感したよ」という。同感である。ダンスインザムードはあんな馬ではないはずだった。4コーナーでもなお離された7,8番手の馬群の中。武豊騎手が追っても馬は伸びず、逃げるダイワエルシエーロとの差からいって、期待は完全に絶望に変わっていた。
 では、なぜ、このような惨めな結果になったのだろうか。レース後、武豊騎手は敗戦の理由について、「不可解ですね」とコメントしていた。しかし、ファンとしては、それで納得できるわけもない。圧倒的な1番人気に支持し、4戦無敗のこの馬に2冠馬になり得る力と資質を認めてきたからである。
 では、武豊騎手に「不可解」と言わしめた理由の底には何があるのだろうか。ファンの中にも、「レース前から、馬の状態がおかしかった」という人はいて、2つの点を挙げる。1つは、当日の馬体重が14キロも増えていたことだ。この馬としては、かつてないことだ。もう1つは、この馬体重増に加えて、パドックでも馬がいれ込んで、終始チャカチャカしていたことだ。他のレースのときもテンションの高い馬だとはいわれるが、あの日は異常に感じられるほどだった。一体、馬に何があったのだろうか。確かに「解せない」点である。あれほどいれ込んでいれば、レースでは能力を発揮できない。14キロもの馬体重増と関係があるのかどうかは分からない。あるかもしれないし、ないかも知れない。あるいは、他に別の何かがあるのかもしれない。
 レース後、武豊騎手は「今日は反応がなかった。最後は苦しがっていた」とも、コメントしている。その理由を「不可解」というわけだが、この言葉の奥には、何があるのだろうか。馬体重増だけについていえば、調整過程で万全さを欠くものがあったのではないか、という指摘の余地はある。関係者の責任が問われても仕方がない。だが、馬が異常なほどに興奮気味であったことには、誰が、どう納得できる釈明を出来るのだろうか。ともかく今年のオークスは、波乱の記録とともに、「不可解」「ミステリー」という言葉も書き加えられるだろう。

( 新倉 弘人)

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