2003年(平成15年)12月20日号

No.237

銀座一丁目新聞

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茶説

部下は上司を見ている

牧念人 悠々

 部下をふくめて周囲の人々は上司をよく見ている。日頃の言葉遣い、態度、服装、ネクタイの柄と色まで見てそれなりに感じている。それがよく当たる。馬鹿にはできない。「何事も平素が肝心」といわれる所以である。心の持ちようが、言葉に、態度に現れる。一週間もその人と一緒におればその人の性格がわかると言われる。緊急の時になおさらその性格がよく出る。
 尊敬する陸士の先輩、後藤四郎さん(40期)は敵の急襲を受けた場合、にっこり笑い、おもむろにタバコに火をつけることにしていた。敵襲を受けて動揺している部下たちは後藤さんの落ち着いた顔つきを見て安心して備えをし、敵を撃退したという。事実、剛胆で、戦の上手な方であった。この先輩の口癖は「にこにこにっこり笑顔で感謝しよう」であった。
 私が毎日新聞野社会部の当番デスクの時、大事件が起きると、まず思いついたことからメモした。それに優劣の順序をつけて、それに従って指示した。総てうまくいった。このとき慌てると、何を指示してよいかわからなくなる。「なすべき事をメモせよ」とは事件の際の原則のひとつである。
 12月13日捕まったサダム・フセインの人物批評は面白い。「死か逃亡かならば彼は逃亡を選ぶ。いかに生き延びるかだけを考えている臆病者だ」(文芸春秋4月号・イラク王族の一人、アリ・ビン・アルフセインさん)フセインの側近は「サダムは明日バクダットで死ぬよりオランダの監獄で百年過ごす方を選ぶといっていた。彼はこの生き方を決してやめないであろう。彼は国家元首でも政党党首でもない。ただのギャングなのだ」(12月16日産経抄)。怖いほど当たっている。周りの人はよくフセインを観察しているとつくづくと思う。
 そういえば、金正日はフセインより頭が良く国際情勢を知っているという評を読んだ事がある。とすれば拉致問題はそう簡単には片づかない。心して掛からねばならない。6カ国協議が一筋縄では行かないのも納得できる。金正日をもっと知ることが拉致問題解決の早道かもしれない。

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