安全地帯(64)
ピアノ発表会を聞く
−真木 健作−
埼玉県朝霞市栄町の大倉ピアノ教室(大倉佳代子さん)の発表会がさきごろ市の産業文化センターで開かれた。演奏者は幼稚園児から小学生、中学生ら40余人。演目は「かっこう」(ドイツの曲)「もくばのへいたいさん」(フランスの曲)「エリーゼのために」(ベートーヴェン)「まほうのふえ」(モーツァルト)など。このような発表会は各地で開かれているようだが、みんな音感もしっかりしていて鍵盤の扱いのたくみなのに驚くほかない。
七人兄弟の末弟に生まれた私にはピアノに向うといった環境にはなかった。小学校1年生はハルピン、2年生は北京。4年生からは岡崎と転々とした。母親に連れられて映画を見たり、冬はグランドに放水して凍らせてスケート遊びに興じたりした。小学校4年生以降は戦時中で、食べるものが次第になくなり、飢えをしのぐのに精一杯であった。ピアノを習うなど考えもしなかった。
「エリーゼのために」を聴いていると、軽い快い旋律が心に染み込んでくる。ベートーヴェンの40歳のときの作品だが、エリーゼという可愛い女の子の顔が浮かんでくる。
この日、司会もした大倉さんは「みんな間違いもなくよく弾けました」と喜んでいた。大倉さんは上福岡市の尚美短期大学(現尚美大学)を卒業。ピアノ教室は6年になるが、はじめは小学校6年生の娘さんの友達にせがまれてピアノを教えるようになり、だんだんと生徒が増えたという。この生徒のなから有名ピアニストが出るかもしれないと大倉さんは夢見ている。 |