2003年(平成15年)11月1日号

No.232

銀座一丁目新聞

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安全地帯(59)

職務質問は素直に受けよ

信濃太郎

 毎日新聞社会部の記者(43)が無灯火の自転車で帰宅途中、職務質問した警官ともみ合いとなり、公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕された(毎日新聞10月2日夕刊)。記者も記者だが、何故これが紙面化されるのか疑問に思った。私が社会部のデスクならこの記事をボツにする。広報の原則は 1、会社に不利な事は発表しない 2、事実のみいう 3、ウソをつかないである。しかも軽微な事件である。汚職、殺人事ではない。わざわざ天下に公表するような大事件ではない。
 会社に不利な事をどうして紙面化すのか、世の中にもっと報道しなければいけないニュースが一杯起きている。問題になれば、自分でボツにした理由をいって責任をとればよい。事件を起こした記者に非がある。無灯火では弁の余地はない。あやまるしかない。しかも時間が午前3時である(9月30日)。パトロール中の警官が職務質問するのは当然である。私は察廻り、警視庁クラブ詰め、警視庁キャップを含めて7、8年警視庁にお世話になり、文句もいってきた付き合いだから警官には親近感を持つ。しかも、消防、自衛隊とともに警察官は常に死の危険にさらされている職場であるのでそれなりに敬意をもっている。私なら「ご苦労様。以後気をつけます。勘弁してください」と率直に謝る。
 新聞記者は特権階級ではない。むしろ謙虚であらねばならない。私などどちらかと言うと態度は横柄で言葉遣いも乱暴である。だが、元士官候補生の礼儀は正しい。長幼の序を守り、取材のニュースソースを大事にする。読者の共感を呼び、共鳴をうるものは記者のもつ人生に対する哲学であり、生き方であるのを知っているからできるだけ身を慎むのを忘れない。

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