2003年(平成15年)9月20日号

No.228

銀座一丁目新聞

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安全地帯(56)

哀れ汝の名は女なり

信濃太郎

 女性警官が独身寮で男の子を生み、死なしたというので捕まった(9月10日)。女性警官は妊娠中も通常勤務をこなし、周りの者は誰も妊娠に気がつかなかったという。27歳になって自分の身一つ処理できないのかといいたくもなるが、それにしても犯罪を取り締まる警察が身内の警官の「挙動不審」を何故見抜けなかった疑問に思う。
 妊娠すれば体に変化をきたす。動作も鈍くなる。食べ物も違ってくる。顔色も声も変る。極めて「挙動不審」となる。これに気づかなったというのであれば、職場の雰囲気は無関心、無感動、無責任であったというほかない。警察官の基本動作の一つに職務質問ががある。真夜中大きな荷物を担いでいる男を見れば、おかしいと見て「どこへ行くのか」と声をかける。大きな荷物を担いでなくても警官の姿をみてあわてて逃げるものがおればおかしいと思い職務質問をする。そして犯罪を未然に防止する。
 これと全く同じである。女性警官の顔は変っていったはずである。つわりもあったはずである。おかしいと思ったとき同僚が「職務質問」すればよかった。それでことはすんだ。何も彼女を「「死体遺棄容疑」で捕まえずにすんだ。これを見逃したのは怠慢である。それよりも今の警察の署内の雰囲気が昔と違って活気のないものになっているのかもしれない。同僚のやる事に無関心になっているのであろうか。寒寒とした署内の風景しか見えてこない。
 筆者は毎日新聞出版局長時代、スポニチ社長時代、月に一度女性社員と昼食会を開いた。雑談しながら彼女達の胸のうちを聞いた。噂話に花を咲かせた。得る事が多かった。
なんといっても一番悪いのは女性警官の相手の男性である。いかなる事情があるにせよ相談に乗り、生まれでようとする命をはぐくむ努力をすべきであったと思う。一人であれこれ悩む女性に手助けするのは情けを交わした男の当然の勤めである。

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