2003年(平成15年)4月20日号

No.213

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(12)

−番狂わせ− 

 選挙に番狂わせはないが、競馬では、番狂わせなどしばしば起きる。そこで、「人気を過信すべからず」といった格言も生まれるわけだ。だが、人はとかく人気に頼り勝ちになる。大方の予想・動向に従うのが無難、というわけだ。「それでは面白くない」と、穴ばかり探している人もいる。そこに悲喜こもごものドラマが生まれる。これが実人生の仕事の上では、そうも言ってはいられない。競馬の面白いところだ。
 4月13日の桜花賞(阪神、1600メートル)の日、「武豊の3着には参った」と、Aさんは歎いた。武豊騎乗の1番人気アドマイヤグルーヴ(7枠、14番)の単勝に賭けていたからだ。最近の武豊人気は凄く、ファンも多い。Aさんもその1人だ。だが、3着に敗れた。スタートで出遅れ、ゴール前追い込んだものの届かなかった。出遅れが敗因のすべてだった。「ゲート内で突進して後ろに下がったときにスタートを切られた」というもので、運が悪かった。武豊を責めるわけにもいかない。やはりファンであるIさんの場合は、単勝をやめて複勝で成功した。配当は180円だが、「銀行の利息よりいい」と、ニンマリした。1万円が1万8000円に、10万円なら18万円になる。Iさんの場合は後者だが、低金利時代の勝負師といった感じだ。「そんな大金は使えない」という庶民派のHさんの場合は、「少ない金額で大きい配当を狙う」のが主義。武豊の馬をからめて3連複を買った。それが万馬券となったのだから、ホクホク顔だ。
 桜花賞は、波乱の様相をうかがわせていたように、やはり波乱となった。2番人気のスティルインラブ、13番人気のシーイズトウショウが1、2着して、馬番連勝HLは9、210円(31番人気)の高配当となった。馬単HLと3連複HLMは、ともに万馬券となった(馬単1万1、370円、3連複1万3、050円)。ところで、レースを振り返ってみると、勝ちタイム1分33秒9は、阪神の桜花賞レコード。文句のつけようがない立派なものだ。このスティルインラブの前走チューリップ賞(2着)のタイムは1分36秒0だから、一気に2秒1も詰めたことになる。これは驚異的なことだ。よほど走りやすい馬場状態だったのだろうが、馬を最高の状態にまで仕上げた厩舎側の手腕も大きい。また、幸英明騎手もロスがなく、巧く騎乗した。勝ちタイムがレコードとなっただけでなく、幸英明騎手にとっては、GT初勝利がクラシック制覇。デビュー10年目の快挙。松元省一調教師にとっても、牝馬のクラシックは初制覇。競馬の女神は、「初物」がお好みのようだった。

(戸明 英一)

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