自然と親しむ良い季節になった。森林浴という言葉はいまや慣れ親しまれている。この言葉を世に提唱したのは友人の秋山智英君である。当時、林野庁長官であった。昭和57年7月のことである。
森林浴は「森林の中を歩くと馥郁とした芳しい香りがし、人をひきつける魅力がある。植物から発散する揮発性のフィトンチッド(植物の持つ殺菌作用をさすロシア語)により、樹林の空気は清浄であり、いろいろな黴菌を殺す作用もあって、人間の体にも良い」というものである。さらに最近の研究では森林はフィトンチッドの働きによって人間に精神的快適性を与えるとともに身体機能を高める効用がある事が確かめられている。
秋山君が出した近著、随想「魅せられた森の不思議」((第一プラニングセンター)に詳しく述べれている。東大を出て農林省に就職した彼が森林の魅力を知ったのは、初任地の熊本営林局(昭和24年12月)の森林調査からである。5年9ヶ月間、仕事のため九州の国有林を跋渉した。真面目に仕事をした彼はここで林野行政の基本のすべてを身につけたと私には思える。昭和24年度、熊本営林署 熊本経営区、25年度、加久藤営林署 白鳥経営区、26年度、上屋久営林署 上屋久経営区、27年度、高鍋営林署 高鍋経営区、28年度、大口営林署 大口経営区、28年度、椎葉国有林(4000ha)買い上げ業務担当、30年度、経営案編成企画調整業務担当。
同じ頃、毎日新聞社会部で私は戦後起きた主な事件を取材した。下山事件(24年7月)、三鷹事件(同)、八宝亭殺人事件(26年2月)、造船疑獄(29年1月)ここで事件取材の基本を学び、事件の怖さも知った。
秋山君は「熊本営林局が所管する九州国有林は暖帯林に属し、変化に富んだ森林構造を持ち、またスギ人工林も多く、他局では体験できない面白い森林生態を学ぶ機会に恵まれ、森林の魅力をつぶさに味あうことができた」といっている。
花粉症について面白い記述がある。スギというと都会人はすぐスギ花粉症のことで毛嫌いするがスギ造林地の多い九州地方の山村では花粉症にかかるひとは殆どいない。自動車、特にトラックなどの交通量の多い都会人におおいのはなぜだろうか。NOxとの複合汚染ではないだろうか。もっと追跡すべき課題だと思うといっている。
今でも中国で植林したり、「むさしの・多摩・ハバロフスク協会」の会長をしたり、世のため人のため「自然と人間の共生」をもとめて活躍している。友人としては嬉しい限りである。
今年もまた秋山君の案内で4月12日(土)多摩森林科学園(東京・高尾)で仲間が集って櫻を見る会を開く。昨今は「花よりダンゴ」で二次会に直行する友人がすくなくない。お酒より科学園内の櫻を眺めながら森林浴をするのが体によいと思うのだが・・・
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