安全地帯(30)
−標語は時代を写す鏡である。−
−真木 健策−
朝霞市がふれあい標語(平成14年度)を募集した。470点も応募があった。最優秀作品は「親切はちょっとの勇気と思いやり」(第一小2年、大畑遥香さん)が選ばれた。
「一日一善」とよく言われるがなかなか実行できない。「勇気と思いやり」。思っているだけではなにもしないのと同じである。まずは勇気をもって実行である。よくできていると思う。
このような標語が当選したのは、親切な人が少なくなっているからであろう。電車のシルバーシートにはいつも若者がふんぞり返っているし、座席では足を投げ出しているし、年寄りを敬いまないし、他人の迷惑を顧みもしない。若者の親切心などみかけるのがまことに少ない。
標語といえば、戦前は「勝つまでは欲しがりません」、「頑張れ 敵も必死だ」などがあった。戦争中だからこんな標語が生まれた。奢侈品の製造禁止となり(昭和15年)、節米からカボチャ飯、大豆入り昆布めし、大根めしなど代用食が奨励された。ヤミ米が横行した。「一機でも多く飛行機を」という標語まで出た。B29の東京空襲が定期的に始まったのが昭和19年11月27日からである。敗戦の色合いが次第に濃くなる。飛行機が十分あればこのような標語は出てこない。
戦後、平和とともに標語、キャッチフレーズは多様多彩となる。筆者が秀逸と思うのは「亭主元気で留守がいい」である。女房族の本音を見事に言いあてている。夫権失墜の時代の反映でもある。調べてみると、このキャッチフレーズは昭和62年にできたキンチョーゴンのCMである。町内会夫人部の集まりで、婦人達が唱和する「タンスにゴン、タンスにゴン。亭主元気で留守がいい」の文句からきている。素晴らしい発想力である。脱帽する。
最後に朝霞市のふれあい標語の優秀賞3点を紹介する。「あいさつは心のふれあい結ぶ橋」(小野美枝子さん)「思いやり誰でもできる第一歩」(鈴木茜さん)「やさしさと笑顔で作る明るい社会」(牛山真耶さん)。 |