7歳になる孫はひとり遊びが上手で、お絵かきをしたり、ままごとのお店屋さんごっこをしたり、色々な形のブロックで飛行機や戦車や怪獣などを作ったりして、自分でも会心作というのが出来上がると得意げに見せにくる。
「これはバナナの木だよ」と言って、あるとき枝をつけた大きな木に見立てたブロックに弓形をした黄色のブロックをたくさんぶらさげて見せにきた。
「あら、とても上手ねえ」
ジグゾーパズルから顔を上げて、娘が如何にも感心したような声を上げた。
「ねえ、ちょっと。なにを感心しているの? バナナってこんな風に下を向いてぶらさっがてなんかいないわよ」
と、例によって“いちゃもん”をつける私。
「下を向いてないってどうゆうこと? 果物はみんな木にぶら下がっているじゃないの」
「本当に知らないの?!信じられない・・・」
スーパーで見る限り、バナナは5、6本ずつ小分けして売っている。なかなか大きな取り立てのままの姿、形をしたバナナを見る機会は少ないかも知れないが、子供ならいざしらず、いい大人がどんな風になるのかも知らないなんて考えたこともなかった。
「バナナってねぇ」
と、両手を上向きに合わせて、グローヴみたいな形をしていて、それが幾重にも重なって、しかも上向きに木になっているのだ、といくら説明しても分かってもらえない。
「確かそうだった、熱川の温室で見たことがある」高一の孫が請合った。そうなると収まらないのが娘と7歳の孫。それまで熱心に取り組んでいたジグゾーパズそっちのけで、証拠が見たいと言う。
「幾らでもあるでしょ」と探して見たが見つからない。辞書でも挿絵が書いてあるのを見かけるが、バナナなんて余りにも一般的過ぎるのか、バショウ科の多年生草木、熱帯アジア原産てなことぐらいしか書いてない。
そこで家にあるビデオの「世界の車窓から」という世界一周鉄道の旅10巻の中から、バナナの木が出てきそうなユーラシア大陸編、アフリカ大陸編、南アメリカ大陸編をつぶさに見たが、全く出て来ない。絵が上手ならすぐにでも書いても見せるのだが、その方は全くダメときているので、さんざんバカにしてしまった埋め合わせに、次の旅行は熱川にでも出掛けるしかないだろう。
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