2002年(平成14年)8月10日号

No.188

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(56)

-子育ても大事な仕事

芹澤 かずこ

 

 首から鍵をぶら下げて親の帰りを待つ、まだ年端もゆかない子供たちを指して「鍵っ子」という言葉がありましたが、学校や公共施設、または民営などの学童保育が出来てからは、余り聞かなくなっています。
 学童保育とは、親が働いていて放課後や春休み・夏休みなどの長期休暇中に家庭での保育が十分に保証されない子供たちを、家庭に代わって預かってくれる施設のこと。全国で20数万もの小学3年生までが利用しているといわれていますが、共働きの家庭が増える中で、益々需要や施設の充実などが問題視されているようです。厚生省も「放課後児童対策事業」として施設に補助金を出したり、予算化するなどの対応を行っているそうで、働く母親の子育て支援は喜ばしいことではありますが、やむを得ない場合を除いて、安易に外で働くことに関して大いなる疑問を感じます。
 「子供の手が離れたから・・・」
 仕事を始める時によく使われる言葉です。いったい何才で手が離れるというのでしょう。まだ年端もゆかない子供のこと、外で何があっても不思議ではありません。
 学校で先生に叱られた、転んで足をすりむいた、友達とケンカをした、こんな些細なことでも子供にとっては一つ一つが事件です。心の痛み、傷の痛みをかかえて戻ってきても、癒してくれる人がいなかったらそのやり場のない気持ちをどこへ持って行けばよいのでしょう。嬉しいことがあった時、走って帰っても告げる人がいなかったら、その喜びは何処へ消えてしまうのでしょう、幼児期や低学年ばかりでなく、中学、高校時代にも言えることだと思います。
 核家族が進んで親は子育てについての身近な相談者もなく、また少子化に伴ない子どもたちも兄弟間での切磋琢磨の機会も減少し、また年配者と接するとか、弟妹の世話をすることによって思いやりの心を育てるといった経験も得られなくなっています。子供が心身ともに健やかに成長していくためには、乳幼児期には親と子の触れ合いを通じて信頼感や情緒の安定を培い、また青少年期には失敗や成功の経験から自立心や自己統制力を養うなど、人としての基本的な生活習慣を身につけてゆくものだと思います。
 親がほんの一瞬でも他に目を転じた時、子供の姿を見失うものです。働いてお金を得ることや、女性の社会進出も大事なことには違いないでしょうが、ある期間、子供の成長を見守り続けることも大事な仕事ではないでしょうか。後になって「ああ、あの時・・・」と後悔しないためにも。



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