2003年(平成15年)6月1日号

No.217

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(80)

雨の休日が好き

芹澤 かずこ

 

 朝、起きた時にその日の体の状態をチェックする、昨日の疲れが残っていないか、顔色は悪くないか、声の調子はどうか。自分の発信する体の情報をきちんとキャッチすること、それが未然に病気を防ぐことにつながる」NHKの健康フェステバルの中での永六輔さんの話を聞いて、全くその通りと反省することしきり。
このところ私は、体の悲鳴を余りにも無視してきた。頭が重い、首が凝っている、目の奥がジーンとする、顔色が冴えない、足が浮腫む、寝つきが悪い。10年前には、この程度の状態は、土日に家でゆっくり寛げば殆ど解消された。ところが最近ではこれが日常茶飯事になってしまい、土日もすっきりしない。
でも、この程度という気持ちがまだどこかにあって、昔の栄光にしがみつくように、何事においても過信していた。しかし、気持ちとは裏腹に体が付いてゆかなくなり、ある日突然に首が回らなくなったり、血圧が上がったり、帯状疱疹になったり。
昔は血圧が低かったのに、とよく口にして「何十年前のこと?」と娘に言われる。若いお医者さまも「降圧剤を続けること、仕事はほどほどに」と。これまでの私の辞書には「ほどほど」なんて言葉はなかった。「何でも一生懸命」が信条だったのに本当に情けないが、長寿社会を寝たきりにならず、健康に生きるためには、体の情報をきちんとキャッチして早め早めに手を打ってゆくよりないだろう。 朝からよく晴れていると、つい働き過ぎてしまうので、たまには雨の休日も落ち着いていい。手紙の整理をしたり、本を読んだり、興味のあるテレビ番組を見たりしてゆっくりと過ごします。今日はNHKのBSUで四国こんぴら歌舞伎「三人吉三巴白浪」を楽しみました。
このこんぴら歌舞伎が上演される金丸座は、1835年(天保6年)に竣工されたという日本で最も古い歌舞伎専用の芝居小屋で、金刀比羅宮の門前町にあります。木造の二階建てで、総て桟敷席、舞台の左右に花道があり、天井には白地に赤の紋入りのたくさんの提灯が下がっていて、江戸時代そのままに芝居が楽しめるとあって、一度は行って見たいと10年ほど前にその頃一緒に仕事をしていた仲間と、JRのこんぴら歌舞伎観劇ツアーに参加しました。
1日目は空路高松へ。栗林公園を散策してから琴平へ入り、ホテルに荷物を置いて先ずは金刀比羅宮への参拝。なにせ金刀比羅さまは海の神様だというのに、山の上に鎮座しておられるのです。土産物の店先には履物と杖が用意してあって自由に借りられるようになっていました。本宮までの石段が785段と聞いて、10歳若かったとは言えちょっとひるみましたが、なんとか自力で登りました。もう今だったらお手上げです。
 2日目は、金丸座での昼公演。切り妻づくりの風情のある芝居小屋、くぐりの木戸を入って、席は2階西桟敷7番。出し物は中村時蔵の「重の井」と松本幸四郎親子の「京人形」、舞台と桟敷が接していて、臨場感をたっぷり味わいました。
 その、金丸座の舞台を久しぶりに見て、仲間との旅を懐かしく思い出し、とてもいい休日になりました。



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