2002年(平成14年)6月20日号

No.183

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(14)

−面白い名前− 

 まず、登場する面々の名を挙げてみる。
 カッパビジン   ダイキチムスメ
 ミエッパリ    ベッピンサバンナ
 ピンクガーター  ドキドキハート
 ワタシノユメ   ラヴミステリー
 上の4つは、河童美人、大吉娘、見栄っ張り、別嬪サバンナという人物で、下の4つが物語のキーワードといった趣である。だが、実は、この6月からデビューする2歳馬の中から面白い名前の牝馬を取り上げて見たのである。もし、これらが同じレースに出たら、どれが勝つだろう。あるいは、どれに勝たせたいと思うだろうか。それぞれに愉しんでいただきたい。
 馬名の登録には、字数の制約がある。1字だけは駄目で、2字以上、9字以内(カタカナ)と決められている。1字だけが駄目なのは、なにかと不都合だからである。大体4字以上のものが多い。父馬や母馬の血統をうかがわせるものもあるが、これらとは別に、最近では自由な発想による馬名が増えている。前出の牝馬の面白い名前も、その参考例といっていい。
 ところで、牡馬よりも牝馬のほうに、面白い名前が多い。すでに引退した牝馬を含め、参考までに挙げてみる。チャッキリムスメ、チャキチャキムスメ、オテンバミヨチャン、ルンルンユッコ、ナニワノオンナ。馬名が誰のことを指しているのか不明だが、想像の世界を広げさせるものがある。そういえば、馬に女の名前を付けた馬主(官僚)がいて、公金横領ですべてが明るみに出た事件があった。どうも男は女の名前を付けたがる。それで無事なら結構だが、そうはいかないのが世の中。似たような事件は少なくない。古くは明治時代にまで遡る。馬に愛人の名を付けていたのが妻にバレて、大騒動に発展した事件がある。家庭騒動が新聞ダネになったほどである。古い競馬世相史の片隅に埋まっている。
話を変える。名前だけからは、牝馬か牡馬か分からない場合もある。たとえば、「ナゾ」という馬などがそうだ。妙な名前だが、この「ナゾ」は410キロそこそこの小柄な牝馬。名前も名前だから、人気にもならなかった。それがなんと、牡馬を尻目に逃げ切って穴をあけた。去年の小倉競馬場(西日本スポーツ杯)でのことである。「ナゾ」が、なぜ勝って穴をあけることができたか? それはナゾである。
 ついでにいえば、この「ナゾ」には弟がいて、その名前がなんと「オモシロイ」というのだから、話は面白い。この馬主は、どんな人だろう。仮に作家なら、ひょっとすると夏目漱石のような人物だろうか。そんな気がする。そのような想像の世界に遊ばせてくれるのも、競馬の愉しみの1つかもしれない。
 前述の牝馬の名前からはずれたものを、付け加えてみる。「ゴマメノハギシリ」「キゼツシソウ」「ゴメンアソバセ」・・・。どれがお好みだろうか。「ガンバッテミル」というのもあり、これには親しみを感じる。ひそかに声援を送りたくなる人もいるだろう。
 ところで、とりあえず、何事にも「頑張って見る!」、というのはどうだろうか、皆さん!

(宇曾裕三)

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