2002年(平成14年)6月20日号

No.183

銀座一丁目新聞

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花ある風景(97)

 並木 徹


 監督・脚本、石塚克彦、ふるさときゃらばんの初のミュージカル映画「走れ!ケッタマシン」−ウエディング狂騒曲ーはいま全国で上映されている。評判は上々である。全国で2000箇所の上映が目標だという。
映画の主人公は悪がきの中学生である。そのター坊こと谷川猛(森脇史登)が仲間を集めて駅前商店街で「ケッタマシン」(自転車)競争をはじめる。さびれていた商店街がたちまち生き返り、お祭り騒ぎになる。レースの車券まで発行する。警察から大目玉を食らい、ター坊は追われる身となる。父親の谷川勇作(上条恒彦)はPTAの夫人たちから槍玉に挙げられる。商店街の自転車競走とはいいアイデアである。今全国の駅前商店街が同じ悩みを抱えている。自転車競走といわず何か町興しの良い企画があるはずである。この映画はひとつのヒントを与えるであろう。
 勇作のような父親はすくなくなった。頑固ですぐ怒り、手を出す。それでいて根はお人よしである。家出して、自転車泥棒.恐喝をして補導されたター坊を迎えにゆき、一発殴ってから抱きしめる。ほろりとさせられる。
 本当に、女性は強くなった。谷川家の長女、ユキ(新山千春)は妊娠して家出するのも、男と別れるのも自分で決断する。見ていて爽やかな感じがする。
 舞台と違って、映像の美しさには感心させられる。棚田の素晴らしさ、棚田での稲ダンスは幻想的であった。鍋倉山の巨木のブナには驚く。「森姫」と名づけられたこのブナは手を広げて抱きかかえると心の悩みに答えてくれる。秋田県白神山地のブナが世界遺産に指定されたように、ブナは地球の生態系に大いに役立っている。巨木のブナを登場させたのはそれなりの意味がある。ふるさときゃらばんの映画がこの一本で終わっては味も素っ気もない。映画はとりつづけねばならない。

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