2002年(平成14年)6月1日号

No.181

銀座一丁目新聞

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茶説

家事こそ最良の子育てである

牧念人 悠々

 「家事こそ最良の子育てである」という言葉をきいて素晴らしいと思った。このような発想は男性から先ず出てこない。今はなき家事評論家、町田貞子さんが五人の子供を育てた体験からうまれたものである。
 月刊誌「母の友」6月号(福音館書店発行)に町田さんの次女、田中周子さんが編集者のインタービューに答えている。「母が言っていたのは『子育てって家事を一緒にすること』ということでした。たとえば、ご飯はだれかが作るものではなくて、子供もできることで参加する。お茶碗ならべたり、まだ小さければお箸を出したり。そうすると、これはおばちゃんのお箸とか、ここはお父さんの席とか、自ずと家族一人一人に関心を持つようになりますね。年齢が上になればお汁を入れてお椀も運べるようにもなって、できることが増えていく。そうやって、家のことを覚えていくと、家のこと全体に気持ちが向いて、気がついてゆく.そういう意味で、家事をやる事は、子育て・・・・と、実感をこめていっていたのですね」
 なるほどと思う。女性が社会に進出して、共稼ぎ夫婦が多くなり、家事を夫婦で分担するようになってきた現在、どうすればよいのかという心配もでくる。
 周子さんの答えをきいていると心配は無用のようである。つまり、子供は二歳ぐらいから家事に興味を示し、掃除機をかければやりたがるし、洗濯機をまわせばボタンを押したいという。その時、忙しくなければ子供にやらせたらよいという。二歳で家のなかのことは90lわかるという。家事をする父親がそれなりの配慮をすればいいわけである。
 町田貞子さんは『暮らし上手の家事ごよみ』と『暮らし上手の家事ノート』の二冊の本を藍書房(東京都渋谷区恵比寿4−3−7−204・電話03−3440−0223)から出している(1997年6月)。当時、筆者はこの二冊の本を頂いている。誠に申し訳ないが、『家事の本』とみてそのまま本棚にしまった。周子さんの話を読んで、この本は実に良い事が書いてあるのを知った。本当に恥ずかしい。町田さんは『暮らしの上手の家事ごよみ』の中でこういっている。「子供の玩具や服の置き場所のコーナーを作り、そこから出し入れをする。子供は言葉をいえなくても自分の玩具はどこにあるのか、母親がどこから自分の服だしてくるかわかるようになる」。周子さんは言う。
 「4、5歳になると.乾いた洗濯物の中から自分の物を自分の引き出しにいれられるようになる。それが片付けであり、収納でもあり、自分の物を管理することへの第一歩です」
 世の中には子育てに悩む女性がたくさんいる。そのため、ノイローゼになったり、幼児を虐待したりするケースが少なくない。しっかり家事をやれば、子供は育つということである。家事を手抜きするのはそれだけ子育てを手抜きする事になる。スーパーで出来合いの食べ物を買ってこないで、手数をかけてでも食事を作ったほうが子育てのためには良いと教えている。台所でトントンと野菜を切っているのを子供が『あたいにも・・・』といったら切らせる真似事をさせたらいい。ゆめゆめ「うるさい」などと怒鳴らない事。『家事は子育てと見つけたり』。

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