2002年(平成14年)3月10日号

No.173

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(42)

-世間は狭い

芹澤 かずこ

 

 つい先日、卒業以来、何十年ぶりかで顔を合わせた小、中学校の同級生から「世の中は何と狭いものかとつくづく思った・・・」とメールが届きました。なんでもそのMさんが時々行く横浜のバーに囲碁の高木九段がよく見えられるそうで、たまたま将棋の話題になった時に私と同級生だと伝えるとビックリして「将棋界には芹澤さんのような人は当分現れないでしょう。若くして世を去って惜しいことをしました。私の心の中ではお元気のままで今でも生きています」とおっしゃって下さったとか。囲碁界の大御所、藤沢秀行先生とは兄弟分のようなお付き合いをしておりましたので、若手の棋士の方々とも近しくして頂いておりました。でも他界して15年にもなろうとしているのに、未だにそんな風に言って頂けるとは嬉しいことです。

 もうひとつ、こんな話もあります。ある時、娘の再婚相手が上司と小料理屋で飲んでいると、隣りでしきりに将棋の話をしているふたり連れがいて、たまたま自分の上司と、隣りの一人が席を立った時に、酔いの勢いに任せて残ったもう一人に話し掛けたらしいのです。
 「先程から聞いていますと将棋が大変お好きのようですが、米長という人を知っていますか?」
 「ええ、まあ少しは・・・」
 「それでは芹澤という人はどうですか?」
 「ええ、まあ少しは・・・」
 「私、その芹澤の娘と結婚したのです」
 「えっ!!! 娘さんとですか? あの芹澤さんの?!」

 この人、誰あろう米長九段その人だったのです。しかも前の結婚の時の仲人でもあり、離婚に至るまでさんざんご心配をかけて置きながら、再婚するに当っては何の連絡もしていなかったので、さぞやビックリなさったことでしょう。あとでこの話を聞いてこちらの方がビックリするやら可笑しいやら。世の中本当に狭いですね。



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