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愛知県瀬戸市の、猿投山麓にある海上の森は、名古屋市近郊にある最後の広大な里山です。ここは東海地方にしか生息していないシデコブシをはじめとした貴重な生物が見られ、野鳥の種類も多い豊かな自然の宝庫です。現在、21世紀万国博覧会の開催予定地とされ、跡地利用としての都市化計画とともに、この場所の自然環境に影響を与えようとしている問題が起きています。ではどんな所なのか、トピックスなど踏まえてお届けします。(図は図上をクリックすると大きくすることができます) 自然通信(15) 今年の初めに当たって。 私が海上の森の近くの高校・短大に入ったのが14年前。そして、実際に海上の森自身を知ったのが8年前になろうとしている、1999年。今年は海上の森に取ってまさに正念場の年になりそうです。ともすれば、今年には粗造成が起こりかねない(しかも万博より先行する住宅・道路事業によって)状況の中、私に森を守る為出来ることはほんの僅かなことでしかありません。このHPに投稿させて頂いているのも出来ることの、ささやかな一つです。今、多くのNGOで森を守る為の試みが行なわれています。ご検討を心より祈っております。 今回目にしたものは、再開された地質調査の為のボーリング跡の刈取られたような道跡や、引かれたレール、そしてそれに抗議する無言ののぼりたち(NGOの皆さんが建てた)でした。分布上貴重な植物が生息している場所にまで延びていたレールも見られました。これは悲しく、また許されざることと思います。工事の案内看板に、「ごめいわくをおかけします」とありますが、生き物にとっては迷惑以上のものでしょう。 森には樹の実が殆ど無いようです。サクラバハンノキが、赤い紐のような長い雄花を咲かせていました。その花をヤマガラが食べているようです。ハンノキの花は良くカラなどの鳥たちが食べているのを目にします。ヤマガラも少ない餌の確保に一生懸命なのでしょうか。登り道の途中にあるキイチゴの仲間で、今ごろ赤いおいしい実がなるフユイチゴも、すっかり生き物たちに食べられてしまったのか、実の跡ばかりでした。一緒に来た主人が、この時期の恒例として、スズカカンアオイの花を探します。まだつぼみでした。 篠田池に着いて腰を下ろし、暖かいお茶とおにぎりを食べていると、すぐ近くの薮で、2羽のルリビタキがおっかけっこをしています。これは、遊びではなく、冬場の餌確保の為のなわばり争いでしょう。(この時期は、雄にも雌にもそれぞれのなわばりがあるのです。)この森には珍しく、一番大きいサギの仲間、アオサギが2羽、池向こうの樹上にいました。 この日はキツネ?らしきフンも発見。中には鳥の羽が入ってました。ヤマノイモの実もありました。絵の通り、平べったい種がさくの中に入っています。さくが割れて、種が風に乗って飛ぶ仕掛けです。アオジがヤマノイモの実があるつるにいたけれど、残っていた種を食べていたのかな?だとしたらあの平べったい種はおいしかったのでしょうか?初夏に花を付けていたエンシュウムヨウランの残骸もまだ残っています。 相変わらず水が抜かれたままの大正池の左側に、道が付いており、レールも引かれていました。それで水が抜かれた理由が分かりました。座り込んだまま、考え込んでてしまいました。「ごめいわく・・・」の看板がここにもあります。エナガ達が数羽飛んでいきます。 里へ出ると、そこにある家の方々が年末の片づけをしていました。多度神社のツブラジイ林の下には、沢山のドングリが落ちています。ドングリを包んでいるのは「殻斗」と呼ばれ、人によって、帽子とか、パンツとか言われたりします。シイの実は、炒って殻をむいて中の白い部分を食べるとおいしいです。このツブラジイのドングリは小粒。細長いドングリをつける方は、スダジイと言い、私の住む豊橋に多いのはこちらの方です。 トピックス 無謀なボーリング調査に対する住民監査請求は却下されました。 11月26日と12月2日に道路建設予定地、及び住宅建設予定地で行なわれる予定の計211本にも登る、地質調査の為のボーリングを差し止める為に、市民団体が愛知県に対し、住民監査請求の意見陳述が行なわれました。これに対し、12月28日、愛知県監査委員は却下の返答を請求者各自宛に書面通達してきました。 この問題点は、もし、予定どおり調査が行なわれるとしたら、今まで繰り返し行なわれてきた地質調査同様、搬入路のための樹木伐採が大量に行なわれ、地下水の噴出を起こすなど自然環境に影響を及ぼす事にあります。また、海上の森に計画されている万博跡地の新住宅や、道路に伴うアセスメント(環境影響調査)はまだ結論が出されていないまま、手続き中です。にも関わらず、必要と思われる以上の調査数は、自然破壊を伴い、あたかも工事着工の準備の様子を示しており、非常に大きな問題です。 この問題に関しては、(財)日本自然保護協会が行政に対し、意見書を出しています。リンク先のHPで見ることが出来ます。同じくここよりリンクしている「瀬戸市の住人のページ」でもその様子が掲載されています。 当日訪れた私は気づきませんでしたが、12月27日に、万博アセスメント検討委員の一人が調査現場の現地視察に訪れ、県の担当者へ強い抗議をされた模様であることが新聞に出ていました。今後もこの件についてはお知らせしたいと思います。
ホームページの案内
今まで森で確認された野鳥たちのリストや森の風景などの写真が沢山掲載されています。 今回問題となっているボーリング調査については、「愛知県のずさんな外部委託調査の実態にせまる」のメニューに出ています。「シデコブシ切断事件」については、「万博関連」で写真での詳細報告をご覧ください。(「表紙」からでもアクセスできます。) そして更に、12月12日より、「市民が提案する森を守る万博」という、万博の現計画に代わる、他の開催地も視野に入れた、自然を破壊しない分散型万博(代替案)の内容が掲載されました!海上の森は里山体験ゾーンとして、現状のまま保全するというもの。是非ご覧ください。
1.2.ともお問い合わせ、及び申込先は489-0953 瀬戸市柳ケ坪町98-5 (0561)84-2953まで。 新たな署名活動が始まりました。ご協力お願いします! 日本の伝統的な農業によって維持されてきた里山は、四季折々の変化に富んだ美しい景観を描き、原生自然にはない農耕文化と結びついた独特の生態系が、自然と一体となった文化と心を育み、同時に生物の多様性も保持してきました。 私達は、日本文化の原風景を保つこの里山を、わずか六ヶ月の博覧会や必要性の無いニュータウン構想で潰すのでなく、未来の子供たちや森に住む様々な生き物のため、活用しながら保存する新しい概念の“世界遺産の里山”として登録する事を要望します。 (提出先は環境庁長官宛) 愛知万博から「海上の森」を守るネットワーク
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