2001年(平成13年)5月1日号

No.142

銀座一丁目新聞

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茶説

憲法を読みましょう

牧念人 悠々

  憲法記念日何はあれけふうららなり  山口青邨

  憲法記念日お経のよう読みたまえ   悠々

 五月三日は憲法記念日。ゆっくり「日本国憲法」をひもといてみよう。少なくとも一回ぐらい目を通しても良いと思う。
 主権在民、平和主義、基本的人権の尊重の三つを柱とし前文と本文十一章百三条からなる。
 たとえば、憲法21条には「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由はこれを保障する」とある。
 仕事柄表現の自由には関心がある。現実にはこの自由がしばしば侵され、考えさせられる事態が起きる。
 「週刊朝日」が4月27日号で「日経新聞の恐怖人事」として同社の論説委員が書いた社説(3月10日)がもとで配転になったと報じている。ジャーナリストとして見逃せない。
 その社説は自民党の亀井静香政調会長が中心となってまとめた与党三党の「緊急経済対策」を「どさくさまぎれの緊急対策」ときびしく批判したものであった。ところが、緊急経済対策のうち株式買い上げ構想と証券税制の優遇措置は日経社長が亀井政調会長に進言したものだというので、社長の逆鱗にふれたというのである。たとえ、意に副わない論説であってもその意見に耳をかすのがマスコミ人の姿勢ではないか。まして社説である。
 本来社説は論説委員個人の意見ではない。その朝、会議を開いて取り上げるべき社説を決め、皆で討議し書くべき道筋をきめる。しかも書いた原稿は論説委員長が目を通し筆をいれる。いわば社論である。責任があるとすれば、論説委員長である。筆者の論説委員を責めるのは筋違いである。
 このような社長の圧力はサラリーマン根性の記者、論説委員に悪い影響与える。記事は迎合的にならざるを得ない。
 新聞経営者はえてして政治に弱い。しかし、名経営者は新聞記者の良心を踏みにじるようなことはしないものである。
 憲法が保障する表現の自由はマスコミ人が日々の場で良心に照らして守ってゆくほかない。勇気ある先人はそれを立派に成し遂げてきたのである。
あえて、この問題を取り上げた「週刊朝日」には敬意を表する。

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