2004年(平成16年)3月20日号

No.246

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(100)

「べんり屋」

芹澤 かずこ

 

  新聞の折込みや郵便受けに毎日のようにチラシが入る。マンションの物件やスーパーの売り出しが多い中に、一つだけ目を引いたものがあった。お困り事の相談処『べんり屋工房』なるもの。秘密厳守・即参上・安心料金・年中無休とあり、タウンページにも掲載しているとか。
 以前、弁理士と便利屋を間違えて大恥をかいたことがあったが、今度こそ本物の便利屋である。メニューを見ると、「不用品の部」「引越し手伝い・運搬の部」「清掃の部」「営繕の部」「代理の部」「人手貸しの部」「探偵調査の部」「ペットの部」「駆除・対策の部」「葬儀の部」「その他の部」と、ありとあらゆる請負仕事が載っている。
 中でも面白いのが、「代理の部」の代理出席一時間3000円、代筆3000円、サクラ一時間3000円、演技代行一時間5000円というもの。ここには注釈がついていて、性別・服装・演技難易度により料金が異なる場合もあります、とある。演技の難易度って何だろう??いろいろ想像するだけでも可笑しい。「人手貸しの部」では、運転代行・順番並び・買い物・場所取り・付き添いなどがあり、何れも一時間3000円。「その他の部」には娯楽相手・子守り・ボディガードなどというのもあり、一時間5000円也。
 これはもう立派な事業であると感心した。今のように宅配便などという便利なものが無い時代、地方へ荷物を出すにしても受けるにしても、「チッキ」と言って、最寄りの駅まで持って行ったり、取りに行ったりしなくてはならなかった。大家族では誰かしらが自転車でその役を担っていたが、人手の少ない家では、リヤカー一つで商売をしていた町内の『便利屋さん』がよく利用されていた。
 『今に便利屋が大きな商売になるぞ』と言っていた父の言葉通り、今や宅配便が大繁盛し、そして隙間(すきま)産業ともいえる『便利屋』がいよいよ頭角を表してきた。



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