2003年(平成15年)3月1日号

No.208

銀座一丁目新聞

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花ある風景(122)

並木 徹

 テレビ朝日の土曜ワイド劇場「家政婦は見た」を堪能した(2月22日午後9時から午後11時20分)。脚本は柴英三郎、監督は岡本弘である。面白くなければ途中でスイッチを切ろうと思っていた。日頃、テレビはほとんどニュース番組とラグビーの試合ぐらいである。ところが最後まで見た。
 百貨店「そごう」の倒産劇を題材にしており、新任社長の自殺、財産隠し、債権放棄、会長の経営責任、労働組合との癒着、家族との葛藤など目の前で進行中のありそうな出来事がドラマ化されているので、ついつい眼がはなせなくなった。かって五社英雄監督とともに「三匹の侍」(1963年10月から1965年4月まで)で見せた柴さんの繊細でしなやかな豪腕は生きていた。
 柴さんという脚本家は視聴者サービスを心得ている。私などはちょっとした言葉に惹かれる。ラジオから流れる歌を「美空ひばりは一回で、森進一は2回で覚える」という家政婦、秋子(市原悦子)の言葉に感心する。音痴だからであろうか。「シャドウーファミリー」は、「シャドウーキャビネット」(影の内閣)がヒントになっているにしてもうまい。会長機密費にしろ、いくらその使途を明白にしろと要求されても、政府の官房機密費と同じく、経営発展のための費用だとして断乎として口を閉ざすあたりも面白い。会長役の北村和夫はやはりしぶい。
 チェロの演奏場面を挿入させるのは見事。チェロ奏者であり、指揮者としても大きな足跡をのこしたカザルスの名をさりげなく出すのも心憎い。人間の心は移ろいやすく、「金の切れ目が縁の切れ目」。最後は億万長者も特別養護老人ホーム行きとは栄枯盛衰は一炊の夢である。
 主人公の秋子は機転もきき、頭の回転も速く、ちゃっかりした家政婦さんだが、市原悦子だから演じられるのだろう。実際問題としてこのような家政婦がきてもらっては雇うほうが困るだろうと思った。
 聞けば、1997年7月に放映した名門フアションデザイナーを題材にした作品も話題を呼んだという。幾つになられたか知らないが、柴さんが健在とはうれしい限りである。

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