2003年(平成15年)3月1日号

No.208

銀座一丁目新聞

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茶説

悪いのはイラクである

牧念人 悠々

 戦争か平和かといえば誰しも平和をとる。対イラクの場合、「非」はイラクにあるのにアメリカに矛先が向けられる。強大な国アメリカの不徳の致すところである。世界の反戦運動は、「イラクよ真剣に査察を受けよ」と叫ぶのが本当である。それにもかかわらず、アメリカのイラク戦争に反対する声が78%に達している(2月25日朝日新聞世論調査)。
 これに同調する日本政府も強く批判されている。イラクは12年前の湾岸戦争後数々の国連決議を踏みにじり大量破壊兵器の開発、保有を続けている。今回の査察にしても見せかけの対応しかしていない。これ以上査察をつづけてもむだである。だから米英スペインはイラクが大量破壊兵器廃棄の「最後の機会を逃がした」と宣言する新決議案を国連安保理の非公式協議で提出した(2月24日)。
 この国の怖さを世界の人々は知らなさ過ぎる。あくまでも悪いのはイラクである。反戦運動はいたずらにイラクに利するだけである。大量破壊兵器が何故脅威かというと、たとえば、SSー18大陸間弾道ミサイル(射程6000マイル)に100キログラムの炭疽菌芽胞でアメリカ国内の人口密集地を狙った場合、300万人の命が失われるからである。ニューヨークなどはたちまち壊滅する。その意味ではミサイルを持つ北朝鮮も脅威である。北朝鮮は最先端の攻撃用生物兵器の開発を行っている。イラクの実態とともにこの事実を多くの人々が知らない。アメリカが生化学テロの対策を市民に急がせているのはこのためである。何も恐怖をあふっているのではない。
 さらに9・11以来戦争という概念は変った。戦争布告などのない無差別テロが常態となる。テロの怖さは随時どこの国でもどんな場所でも起きることである。自爆テロに至っては防ぎようがない。ウサマ・ピンラディンとアルカイダのテロ集団との戦いはまだ終わっていない。アメリカには9・11の痛烈な痛みが体に残っている。その痛みの温度差が国際協調を難しくしている面もあるかもしれない。
 新聞の社説は「しかし、だからといって、今戦争という手段をとる必要があるだろうか」と否定的な見解をとる。イラクが明確な証拠を出せば、戦争にはならない。イラクが査察に全面的に協力することである。それこそ戦争を回避する道である。世界は12年もイラクにだまされながらなおもだまされつづけようというのであろうか。

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