1999年(平成11年)9月20日号

No.85

銀座一丁目新聞

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横浜便り(2)

分須 朗子

 鎌倉の鶴岡八幡宮でお札を買ったことがある。

 縁結びのお守り。紅と紺の対になった札で、糸巻きのようなものがそれぞれに付いていた。「しづやしづ しづのおだまき繰り返し 昔を今になすよしもがな」の“おだまき”にちなんでいるのだろう。

 鎌倉で捕らわれの身となった舞の名手、静御前が、源頼朝の命で舞を奉納した際に吟じた歌。非情な敵、頼朝を前に、源義経への愛を勇敢にも謡い続けた。頼朝の立腹をものともせず、反逆の義経を慕う静。だが、強い愛情も成就することはなかった。

 これは、まさに悲恋。

 おだまきを眺めては、考えてしまった。・・・果たして、これは良縁守なのか?静御前の愛情の深さを見習えと?どうなんだろう?・・・2人の生まれ変わりとなって私たちは一緒になりましょうね、という願いでもこめているのか?


 話は変わるが、輪廻転生を信じるか?

 信じるとすれば、人間は、何回も肉体の衣をまとったり脱ぎ捨てたりしながら転生する魂。一つの魂が、世を変えて永遠に生き続けることになる。

 前世療法では、確かな理由もなく心を病んでいる人が、催眠治療によって過去生に退行し、現世の苦しみとの因縁を解くことで治癒されていく。

 米国の精神科医、ブライアン・L・ワイス博士の著書『前世療法』によると、いつの生でも、自分にとって主だった存在(魂)とは繰り返しめぐり会っているという。つまり、現在の家族や大切な知人とは、過去生でも形を変えて共に過ごしていた。来世では親子が師弟かもしれないし、夫婦が姉妹かもしれない。

 ・・・死も別れも一時のもの。その魂は、すぐにそばに戻って来る!

 また、ワイス博士は言う。それぞれの転生でしなければならない体験をし、そこから学ぶべきことを学んで、一つずつ階段を上るがごとく、自己を磨いて行くことが私たちの使命だと。

 ・・・永遠の階段は果てしない。ゆっくり磨いて行こうじゃない!

 そういうわけで、静御前の縁結び守の由来は、生まれ変わりの説が濃厚となった(独自論)。が、私は思い切って、お札を燃えるゴミの日に捨ててしまった。言い訳としては、「現世の自分を信じたい」。「“脱・他力本願”を実践してみたのよ」。

 いまは、ちょっとだけ、「ばちあたり」におびえていたりもする。

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