1999年(平成11年)9月20日号

No.85

銀座一丁目新聞

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茶説

“公定歩合を上げよ”

牧念人 悠々

 ここ数年、スポーツ紙の駅売りやコンビニ売り、いわゆる即売が落ち込んでいる。スポーツ紙の購読者は年齢が意外に高く、40代以上の人々が多い。とりわけ年金生活者が少なくない。公定歩合が0.5%とあっては預金金利はゼロに近い。即売代金130円を出す余裕はない。即売落ち込みの原因のひとつである。

 このような現象は何も新聞即売に限らず他の商売でもみられるはずである。金利を上げれば消費が伸びる。消費が伸びれば、好況なる。何故いつまでも公定歩合を0.5%のままに据え置くのか。全くわからない。

 一時、経済評論家は「低金利は不良資産を抱えた銀行救済のためだ」と論じた。たしかに預金者を犠牲にした政策である。そのあと債務超過に陥ったいくつかの銀行に対して、公的資金を投入して救済した。預金者保護のためのやむをえない措置だろうと、納得した。

 だが超低金利から4年、金融の流れは、金利高を指向し、規制緩和を徹底させることを求めているように見える。とりわけ、「金利を上げよ」と強調したい。

 最近、知人から、いま評判の増田俊雄さんの東京講演会(824日)の要旨をいただいた。

 「1995年以来、日本政府は『サプライドサイド』中心の政策をとり、決して国民、消費者側の政策をとらなかった。95年から公定歩合0.5%という超低金利政策をとって、日本の投機資金をアメリカに追いやり、株価を暴落させ、キャピタルゲインのチャンスを国民から奪ったあげくの果て、預金金利をゼロ同然にした。国民の総預金高は約800兆円。世界先進工業国の平均預金金利は5%だから国民は年間総預金高の5%即ち40兆円も政府に奪われたことになる。政府は国民から奪った資金を銀行その他の支援につぎ込み続ける。企業は公的支援の条件として社員の首を切る。これをリストラと言い、公的資金をふんだんに貰い、ふんだんに首切りをやる。そして政府は40兆円も奪った国民を失業に追い込む。これが日本政府の景気対策の基本である」

 これは増田講演要旨のほんの一部である。0.5%の公定歩合は実施から9月で4年たつから政府が奪った金額の総額は160兆円にのぼる。この実体を国民はどうみるのか。つくづくと日本の国民はおとなしいと思う。いまの政府の政策にもっと怒ってもいい。怒るべきだ。

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