1999年(平成11年)9月10日号

No.84

銀座一丁目新聞

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茶説

金庫荒しに金融機関の対応の仕方

牧念人 悠々

 親しくしている知人が金庫荒しにあった。警察を呼んで調べたところ、知人の入居しているビルの階上の事務所でも同じく被害にあって、預金通帳とその印鑑が盗まれていることがわかった。知人の方は信用金庫の通帳1つが盗まれていた。印鑑は別のところに保管してあったので無事であった。これでひと安心と思っていたら、思いがけない事がおきた。

 二つの金融機関が二者二様の対応をみせたのである。

 階上の事務所の取引銀行の窓口嬢は、払い戻しにきた人物に対し、午前中の多額(3百万円)引き出しの場合のマニュアルに従い、住所・電話番号をたずねたところ、その男は怪しまれたと思ったのか、通帳をその場に置いて逃げてしまった。

 一方、知人の取引していた信用金庫の窓口嬢は、ただ漫然と印鑑の照合をしただけで、なにも怪しまずに250万円を払った。印鑑はニセモノでよく照らし合わせれば判別できたと知人は言っている。

 知人は結局250万円の損をしたのである。

 金融機関はみな同じというわけではない。行員の教育、行風、行内の整理、整頓、マナー、規律などそれぞれ異なる。とりわけ銀行にとって大切なことはお客へのサービスである。行員の日頃の執務態度がサービスに現れる。お客さまをよく観察しておれば、顧客の顔は自然覚えるし、出しおろしのクセがわかる。それが少しでも違っておれば、不正支払いにつながるのではないかと警戒、赤信号を出さねばならない。それが、行員の危機管理能力である。階上の事務所の銀行は、行員の教育も行き届き、行内の規律もしっかりしておればこそ、行員たちが、その場で誠心誠意、自分の仕事を果たしたのである。

 預金を引き出された信用金庫は、いくら自分のところに落ち度がないと強弁しても、口コミで信用は下落し、250万円の損害ではすまないだろう。

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