花ある風景(551)
湘南 次郎
戦後の在米邦人
本誌平成27年2月10日号(花ある風景)に掲載の戦前・戦中編の続きで料「北米川柳道しるべ」戦後編より摘出したもの。収容所より釈放され再起を期した方々、また、戦後渡米した人々を含め、活躍する邦人の頼もしさ、逞しさをご想像いただきたい。
昭和27年(1952)戦後の復興を祝う歌が在米邦人のなかで公募された。当選の作詞は川柳子、実藤素子女史。作曲を古賀正男氏に依頼の予定だったが予算の関係で日の目を見ず、まぼろしに終わったものであった。
(在米同胞の歌)
1.燃ゆる希望を握りしめ 海を越えたるアメリカの
土を踏みしめ若き手で 熱と誠意をひたすらに
籠めて下した一鍬 広げし我ら同胞の
静かに強き奮闘史
2.寄せくる高き荒波も バラック叩く暴風も
忍ぶ心に尚つのる 高き理想の茨路
弛まず進む幾星霜 技は光りて日系の
名は大陸に刻まれぬ
3.ああ誇らかに振り返る 固く築きし礎に
雄々しく立つは第二世 自由の国に堂々と
翼広げて果てしなく 我らの夢は栄育
響け祖国へこの凱歌
(川柳で見る戦後の同胞)
日の丸の旗が陛下を守り抜き
涸れ果てた涙を絞る三面紙(故国敗戦の惨状)
待望の日の丸あげよ水泳着(フジヤマのトビウオ古橋・橋爪)
ベトナムの方へ陰膳据える母(わが子出征)
結局は貯金してくるラスベガス
ヨセミテの樹齢あやかる腰伸ばし
日本なら湯の宿並ぶヤロストーン(国立公園イエローストーン)
君が代を孫が弾いてるニューピアノ(やっとピアノが買えた)
幸せは嫁と邦字紙読み語り
日本へ行ってくるよと墓に告げ
グットバイ富士よ成田よ目はかすむ
一世の枕木あって客車行く
妻の碑に一句彫り込む日本文字
パイオニア野良の二世へ団子汁
忠誠を三つの国に誓わされ(台湾系の方は戦前日本人)
日本語を横這いさせる国となり(横書き)
永らえて世紀の峰を無事に越え(21世紀)
マウンドに種まきノモがロスを去り(野茂選手の活躍)
イチローに忍者を見ているアメリカン
敗戦の日本アメリカよりも富み
青い目が日本車の良さ説いて行き(米人セールス)
白黒黄期待の船出オバマ丸
ニューヨーク負けるな明日の夢がある
無縁塚風に吹かれて故国向く
天駆けた移民の夢は子らが継ぎ
根づかせた桜を愛でて移民逝く(ご苦労様)
(資料説明)
喜怒哀楽の日系百年史「北米川柳道しるべ」パイオニア川柳吟社 関 三脚編
(上記は1968年、ロスのリトル東京日米文化会館内にオープン毎月一回句会を開き、句報も発行、羅府新報に掲載、会員85名)
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