2015年(平成27年)1月1日号

No.631

銀座一丁目新聞

上へ
茶説
追悼録
花ある風景
競馬徒然草
安全地帯
いこいの広場
ファッションプラザ
山と私
銀座展望台(BLOG)
GINZA点描
銀座俳句道場
広告ニュース
バックナンバー

 

花ある風景(546)

 

並木 徹

 

古事記・万葉集をひもとく 

 NHKの朝のドラマ番組「まっさん」のウイスキー作りを見ていると古事記の酒楽の歌を思い出す。

 「この御酒(みき)は わが御酒ならず 酒の司(くしのかみ) 常世に坐す(とこよにいます) 石立(いはた)たす 少名御神(すくなみかみ)の 神寿(かみほ)き 寿き狂ほし 豊寿き 寿き廻し 献り上し御酒ぞ 乾(あ)さず食(ほ)せ ささ」(仲哀天皇の章4・気比の大神と酒楽の歌)。

 御酒礼賛の歌である。この御酒が立派なのはスクナヒコナの神様という酒の司が酒を讃えては醸造してきたからだという。みんな「神寿き 寿き狂ほし 豊寿き 寿き廻し」踊り狂ったという。「ささ」は掛け声である。

 さらにこの歌に応えた歌が続く。
「この御酒(みき)を 醸(か)みけん人は その鼓(つつみ)臼立てて 歌ひつつ 醸みけれかも 舞いつつ 醸みけれかも この御酒の 御酒の あやにうた楽(だの)し ささ」

 これは「酒楽の歌なり」とある。

 最近、読んだ本居宣長の「うひ山ふみ」(岩波新書)では古事記・日本書紀のほか万葉集も目を通せと薦めている。俳句を楽しむ関係から万葉集は手ばせないが、いい歌がいっぱいある。「田児の浦ゆうち出でて見れば真白にぞ不尽の高嶺に雪は降りける」(巻3―318・山部宿祢赤人)は好きな歌である。
 
 朝日新聞(平成26年12月13日)によれば、この歌が「百人一首」の中で読者が一番好きな歌として選ばれている(第1位・525票)。ボケ防止から「かるた競技」を始めた人が少なからずいるようである。「百人一首」では最後の句が「雪が降りつつ」となっている。原歌は「雪波零家留」である。「ふりける」が正しい。

 英訳すると「COMINNG OUT FROM TAGO‘S NESTLED COVE、I GAZE;WHITE,PURE WHITE THE SNOW HAS FALLEN ON FUJI’S LOFTY PEAK」(リービ英雄著「英語で読む万葉集」・岩波新書)。 

 「初春や古典読みとく御酒かな」悠々