2014年(平成26年)10月10日号

No.623

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茶説

見出しは「日本語のミュージカルショー」である

 牧念人 悠々

 湘南地区に住む友人とはよくメールでやり取りする。勉強家の彼からいつも教えられることが多い。さる日次のようなメールが来た。

 「今朝の日経新聞社説に『コピペ答弁では納得できない』の見出しで安倍首相の国会答弁を批判した記事が載っていました。

 家内も僕も『コピペ』というカタカナ語は初見でした。ネットで検索したら(copy and paste)のことでした。

 多分僕らが時代遅れなのか、それともマスコミに住む人たちには当たり前の用語なのでしょうか。

 総入れ歯の僕には『コピペ』は発音しにくいですね。 話言葉としては落第でしょう」

 私も「コピベ」は知らなかった。だが新聞の見出しに使う用語ではない。しかも社説である。注意した方がよい。「コビペ」はネットの世界では日常的に使われている言葉のようである。私もネットで検索すると「コピー・アンド・ペースト(英:Copy and Paste)は、文章やデータなどをコピー(複写・ 複製)し、そのコピーしたものを別の場所などへペースト(転写・貼付)するという操作を 表すコンピュータ用語である」とある。
日本経済新聞も同じだと思うが毎日新聞の「用語集」には「一般していない外国語はなるべく使わない。新しい概念で適当に言い換えにくいものや専門語で分かりにくいものは、文中にカッコして短い説明を着けるか記事の末尾に注として説明を入れる」とある。

 新聞の見出しを「日本語のミュージカルショー」というのは毎日新聞の名整理記者だった諸岡達一君である。「何気なく毎日見ている新聞。読者のみなさま、見出いしを楽しんで読んでください。そこは日本語が躍動している舞台です」という。日経の見出しはいかがなものか・・・


 友人のメールは続く。

『3日の日経夕刊「あすへの話題」欄に作家 眉村卓さんが「タイと鯛」の題でエッセイを載せていました。要旨。「ずっと昔、某俳句結社誌に毎月投句していた奥さんが、弟の就職を祝ってネクタイを買い一句を投句した。

 “就職の決まりし弟にタイ選ぶ”

 雑誌主宰の選者の添削。

 “就職の決まりし弟に鯛選ぶ”

 これをみた奥さんは、以降その雑誌への投句はやめてしまったという。

カタカナ・横文字を嫌う伝統俳句の専門家はタイ=鯛しか念頭になかったのであろう。』


 主宰者は常に自分が問われる。自分のした添削がそのまま自分の実力として示される。俳句を習いたい人はその主宰者を選ばねばならない。私なら「寒雷やひじきまぜる鍋の中」を詠んだ横山房子さんのような方を師匠にしたい(月刊『俳句界』10月号魅惑の俳人横山房子より)。


 なおも友人のメールは続く。
『僕が昭和31年初渡米した時、中古の自家用車のタイヤがハイウエイでパンクしたので、近くのガソリンスタンドに駆け込み、「パンクした」と助けを求めたが全く通じず手こずったのを今でも覚えている。

 正解は「フラット タイヤ(flat tire)」。

 これも昔話ですが海外勤務の経験のある会社の先輩が貿易には無関係のメーカーに出向したとき、荷渡し場所を示す貿易用語「エフ オー ビー(F.O.B.)」など英語の専門語をやたらに口にするので[Mr.FOB]のあだ名がつけられ敬遠されていました。 日本人社会特に専門分野の人達にしか通じないカタカナ語の氾濫には腹が立ちます』


 「お前の原稿もコピペではないか」と言われそうだが立派な友人を持ち、それなりに読書をしている成果がこの原稿である。

 「秋深し大記者してコピペ説く」 悠々