2014年(平成26年)9月10日号

No.620

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安全地帯(440)

信濃 太郎


日本版NSCに期待する


 国家安全保障局が今年1月出来てから8ヶ月になる。米国に見習った日本版NSCはどのような仕事をしているのか。ウクライナ紛争、イスラム過激派組織「イスラム国」の台頭、中国の尖閣列島の領海侵犯など国際情勢は緊迫の度を増している。国家安全保障局の役割は大きい。その局長・谷内正太郎さんは就任に当たり「NSCは総理をはじめとする4人の協議体です。その協議体の議論や政策判断のための材料、さらには政策選択肢を提供するのが国家安全保障局の仕事です。従って政治主導の外交・防衛の司令雨塔の基礎構造になるものだと思っております」と述べる(雑誌「外交」23巻2014年1月号)。

 安倍晋三内閣がここまで無難に来ているのは日本版NSCが機能しているからかもしれない。総勢60人の世帯。

「局次長」(内閣官房副長官補) 兼原信克(外務省、1981年・国際法局長、日米安保条約課長)
「局次長」見澤將林(防衛省、1978年・防衛政策局長、防衛政策課長) 

「審議官」 山崎和之(外務省、1983年・首相秘書官(麻生)・北米1課長)、
武藤義哉(防衛省、1983年・官房審議官・国際企画課長)、
長島純(航空自衛隊、1985年・情報本部情報官・ベルギー駐在官)

「参事官」(班長) 
総括・調整班(19人、増田和夫班長、防衛省)
政策第1班(8人、鯰博行班長、外務省)
政策第2班(8人、船越健祐班長、外務省)
政策第3班(7人、伊藤茂樹班長、防衛省)
戦略企画(8人、赤堀正洋班長、防衛省)
情報(11人、白井利明班長、警察庁)

 このほか、総理の補佐役として国家安全保障担当総理補佐官・礒崎陽輔(内閣総理大臣補佐官、参議院議員兼務)がいる。

 このメンバーを見て友人霜田昭治君は「文化に詳しい人がほしい」と感想を述べた。文化は時代を先取りする。情報収集、物事の判断には役に立つと思う。

 具体的にはどんな仕事をするのか。たとへば、尖閣列島に中国軍が上陸した場合はどのような対応をするのか判断材料を出す。現実には難しい判断を迫られる。過去の歴史も参考となる。英国とアルゼンチンが領有権をめぐって争ったフォークランド戦争が一つの「戦訓」となる。1982年4月2日、アルゼンチン軍がフォークランド諸島へ侵攻した。32年前の出来事である。英国はサッチャー政権時代。外務省は「あくまでも外交交渉で事態解決を」といい、海軍省は「断固戦争を」主張したらしい。当時、米国は戦争反対であったようである。それを「鉄の女」サッチャー首相は押し切って戦闘がはじまった。この間、首相と関係者の間でどのようなやり取りがあったのか興味深い。

 フォークランド諸島を占領したアルゼンチンの空母「ヴィンテシンコ・デ・マヨ」、駆逐艦、巡洋艦7隻、兵員5000名に対してイギリス海軍はVTOL機や原子力潜水艦を初めて実戦に投入した他、空母「ハーミス」「インビンシブル」を含めた40隻にも及ぶ大機動部隊であった。この戦闘によって両軍ともに数百名の死傷者を出したが、アルゼンチンは敗退、6月14日、降伏した。この戦争は貴重な教訓を日本版NSCに与える。

 私はあくまでも戦争は避けるべきものだと思う。相手が中国とあればなおさらである。先の大東亜戦争が中国との不戦の教訓を残している。日本版NSCへの期待は大きい。