2014年(平成26年)9月1日号

No.619

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安全地帯(439)

湘南 次郎


老夫婦ぜんざい


 「過去を謳歌するものは、弱者である」というが、もうそんな元気もない。齢(よわい)米寿ともなれば人生賞味期限切れ。夫婦二人っきり。二人で一人前にもならない。いよいよ先が見えて来た。家内に促されヤット立って電話にでたら生命保険の勧誘、歳を言ったとたんにガチャン。このごろはマイカー、ゴルフ会員権のすすめもない。あるのは、老人ホーム、おかずや弁当の宅配の勧誘、庭の手入れ、家の修理、なんとか互助会(葬儀屋)、病院の説明会、弁護士の相続相談。友の電話も生死確認か病気の話、大体ろくなことはない。同窓会報の死亡欄を見て友が次々と亡くなり淋い。新聞の死亡欄では年上だとマ仕方がないか。年下だとお気の毒にと思うようになる。

 過日家内の脈拍が何日も30代になる。慌てて医者に連れて行ったら検査の結果ペースメーカーを埋め込むことになった。現在85才、技術が進歩し機器で7年は持つとのこと、すると92才までか、途中で無駄にならぬだろうな。火葬場で器械が出てくるのかな。人間が器械に動かされる時代だな。子供の時見たチャップリンのモダンタイムスを思い出す。病院でくだらぬことを考えていたが、手術室から出て来た家内の手首の脈を数えてみると、突如として正常になっているのだからたまげたもんだ。後日器械で傷口が出っぱっているのを見るとかわいそうやらお気の毒、でも、これで生き延びたのかと諦める。

 だが、そのあとがいけない。退院後フラフラ、容体が変だ。1週間後の検診で結合した血管が高齢のため薄く、そこから出血し心臓を圧迫しているというのが判り、即再入院。苦しみながら血液を抜くが、今度は肺に水がたまっているとのこと。3週間も入院し、なんとか退院するが、要注意だ。あいにく同居の長女は亭主の出張で遠方に、前回よく見てくれた次女は股関節の手術で入院してしまう。いよいよ妻介護の覚悟をきめたがあいにく、これが女の業(ごう)とやら。家にいれば下手な男の家事に目がつくのは当たり前、あとは想像にお任せする。静かに養生してくれればいいのに、在宅より入院していてくれた方が楽だ。

 ところが、一週間後の検診で原因不明「炎症反応」が10倍にもなっている。また、抗生物質のお世話になるが、熱がでれば即入院だ。時限爆弾を抱えているのが本人はまだわかってない。本人いわく「あなたの入院はたいへんだったのよ」と。実は10年ほど前、小生30倍の「炎症反応」で高熱が続き3週間ほど入院し、みなに迷惑をかけた。あの思いはさせたくないが、本人は極めて能天気だ。よく気が付き、よく動き、よく働きだす。お静かに。お静かに