花ある風景(525)
並木 徹
映画「WOOD JOB」の描くもの
矢口史靖監督・三浦しをん原作映画「WOOD JOB 神去なあなあ日常」をみる(5月19日・府中)。大学進学に失敗、恋人からも振られ、行く当てもない若者の行く先が林業であったという物語である。この映画を見て、なぜか若山牧水の「幾山河越えさり
行かば寂しさのはてなむ国ぞ今日も。旅ゆく」を思い出した。
「緑の研修生」の文句と美人モデル女性の広告に誘われ三重県の山奥に村で1年間林業の研修を受ける。主人公平野勇気(染谷将大)は「幸い」を求めて頑張る。
日本は森林国である。国土の7割が森林におおわれている。今人手不足で現場は荒廃している。昭和30年頃自給率8割あったのに現在は輸入材に頼り自給率は2割に落ち込んでいる。伐採しなければならい木がそのままになっている。間伐もままならない現状である。
勇気は過酷な現場で飯田ヨキ(伊東英明)のしごきを受け成長してゆく。霧深い山の中で迷子になった少年を山神の手に誘われて助け出す。本人はマムシにかまれ失神して、救急車で病院に運ばれるドジを踏む。
村の祭りが勇壮である。男たちはみんなふんどし姿。祭りでの行事“山おとし”は古から伝わる伝統行事であろう。山頂近くに100年へたであろう古木を古式にのっとり切り倒し、枝を払って丸太として山の斜面からずり落とす。斜面には丸太が滑走する施設がつくられている。この施設をスラ・サデと呼ぶ。映画では村の衆が丸太を運ぶ際、縄が勇気の足に絡まったためやむを得ず勇気だけが丸太の上にしゃがみついて斜面を下ってゆくシーンが映し出される。山男の一人として村に溶け込んだ一瞬なのであろう。モデルの村の娘の心を捉えた瞬間でもあった。
山男が言う。「木を切り取るのは100年後。子か孫の時代である。その時始めて木の値打ちが分かる。自分が死んだあとどんな仕事をしたかが分かる」。山の仕事を今一度見直しても良い。そのような動きも出ているという。現代人はあまりにも目先の利益に追われている。
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