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戦没者追悼と靖国神社
牧念人 悠々
新聞は首相の靖国神社の参拝について靖国神社が追悼の場としてふさわしいかどうかあり“指導者の追悼の是非”ではないと主張する。つまり靖国神社が「追悼の場」としてふさわしくない論拠に東京裁判で侵略戦争を指導した「平和に対する罪」で有罪になったA級戦犯が合祀されているのを大きな理由として挙げる。この論拠は間違っている。東京裁判自体戦勝国が日本を事後法で裁いた復讐劇であった。しかも軍事占領中の出来事であった。これをしっかりと理解してほしい。今まで罪にならなかった行為を新しく法律を作って裁くのは人権無視も甚だしい。また「侵略戦争」と軽軽しく言うものではない。戦前、侵略戦争をした米国、ヨーロッパ諸国もめったにそれを口にしない。A級、B級、C級とは当時のGHQが名づけたものである。GHQの最高司令官マッカーサー元帥も後に「あの裁判は間違いであった」と証言さえしている。刑死された7名、未決拘禁中に死亡した2名、結審後の受刑中に死亡した5名の合計14名が戦犯ではなく『法務死』として昭和53年秋に合祀された。
もう一つの論拠である「サンフランシスコ講和条約で東京裁判を受け入れた」とする点である。平和条約第11条の解釈は原文が“trial”でなく“judgement”とある。「“裁判”を受け入れた」のではなく「“判決を”受けいれた」が正しい解釈である。日本政府が占領軍に代わって現在服役中の受刑者の刑の執行を担当するわけだ。独立後この方針で受刑者の赦免,減刑、仮釈放など処分が行なわれた。
さらに法律面から見る。昭和28年8月、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正によって戦争犯罪裁判被告として刑死・獄死した人々の遺族にも戦没者遺族年金と弔慰金が支給されるようになった。この際の法改正議決は自由党、改進党,右派・左派社会党と与野党挙げての全会一致の可決であった(第16回特別国会)。旧敵国の軍事裁判で有罪となった人々を国内法では罪人と見なさいという意味である。国会で決めた事である。新聞が「A級戦犯が靖国神社に祭られているから追悼の場としてふさわしくない」というのであれば民主主義政治の否定になる。恩給についても昭和29年と昭和30年と法改正があり扶助料支給が決まった。恩給は重罪に処せられた者には支給されないと法律で定められている。戦犯受刑者が恩給を受けられるのはこの人々が国内法に基づく犯罪者でないわけである。
以上から「A級戦犯が祭られている靖国神社」という表現は明らかに間違いである。多くのマスコミがこの表現を使い韓国や中国と同じように靖国神社に参拝する首相や政治家を非難するのは極めて不当である。安倍晋三首相が「国のために戦った兵士のために手を合わせて祈るのは、各国リーダーの当然の思いだ」というのはその通りである。
新聞が「首相が再び靖国神社に参拝する可能性がある限り、歴史認識で国際社会の信頼を取り戻すのは容易ではない」と指摘するが改めるべきは新聞の歴史認識ではないか。国立追悼施設の建築案など論外である。まして当然である首相の靖国神社参拝を非難し続けるのは日本の国柄を損なうものである。
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