知人及川光代さんからこのほどCD「母さん帰ろ」をいただいた。早速聞いた。歌手諌山実生が切々と歌う声はハスキーで胸に迫るものがあった。
「母さん帰ろ
お家で父さん待っているよ
・・・・」(1番)
この詩は平成23年3月11日東日本大震災で、海にのまれて帰らぬ人となった母を思い、海辺で待ち続ける幼子の話を伝え聞いて、その思いをつづったものだ。「命の歌」「絆の歌」と言ってもよいであろう。
作詞は「豊田ぱくりこ」となっている。これにはわけがある。及川さんの夫・福田篤さんは作曲家を目指していた親友の息子さんが志を半ばにして26歳で平成23年に早世した、その無念の思いをこの歌にのせて「豊田ぱくりこ」の名前で昨年11月に発表したものである(作曲・しいの乙吉編曲・加藤みちあき)。
「・・・・
星がキラキラ笑っている
お手をつないで帰ろ」(4番)
東日本大震災の死者は15885人。行方不明者2623人。未曾有の被害者数であった。多くの悲劇を生んだ。いまだ立ち上がれない人もいる。
「母さん帰ろ」の歌詞を口ずさんでいると、「うたをわすれたカナリヤ」を作詞した詩人・西条八十の言葉を思い出した。「今の日本中のひとびとはある意味で歌を忘れたかなりやではないだろうか。思い出さなければならない大事ないのちうたがどこかにかくれているのではないだろうか」
「うたをわすれたカナリヤ」の4番にいう。「うたをわすれたカナリヤは 象牙の船に銀の櫂 月夜の海に浮かべれば わすれたうたをおもいだす」(曲・成田為三)。「象牙の船・銀の櫂」は現代ではCDだ。カラオケだ。聞く気になればいくらでも聞ける。歌いたければカラオケもある。
歌おう。「母さん帰ろ」を・・・
(柳 路夫)
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