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ウクライナ情勢の行方どうなる
牧念人 悠々
ウクライナの情勢が気になってしょうがない。16日のクリミア自治共和国のロシア連邦へ帰属を問う住民投票はロシア編入を賛成96・77%で決め、独立を宣言した。ウクライナ暫定政権は独立無効を宣言、米欧州諸国は国際法違反としてロシアへの制裁を課した。
先に「銀座展望台」(3月4日)で次のように書いた。「ロシア軍クリミアへ進駐。ウクライナの主権侵害は明白。直ちに戦争にならないのが人類の知恵。全欧安保協力機構まず監視団の派遣など外交努力をはじめる。6月ソチで開催のG8の開催は無理であろう。主権侵害の場合の解決方法は1、現状回復。2、賠償。3、謝罪である。ロシアはどう出るか。分別ある大国の行動を示すことを期待する。とりあえずは外交努力でロシア軍のウクライナからの撤退が先決である。戦争は愚の骨頂である」
ジョン・ケリー米国国務長官によるロシアのラブロフ外相の説得もうまくゆかず、事態は悪い方向へ進んでいる。ケリー国務長官はソフト派、軍事力行使に極めて慎重である。またチャック・ヘーゲル国防長官も核兵器全廃を唱え、かってはベトナム戦争に反対を唱えた闘士であると聞く。ロシアがクリミア編入を認めても戦争にはなるまい。
クリミア自治共和国の人口200万弱。日本で言えば札幌市なみである。面積2万6000平方キロ、新潟県と静岡県を合わせた広さである。このような小さなところでと思われがちだが、その場所故に国際力学が働く。どちらが親米欧州か、親露かとまなじりを決する。さらに言えば、一人あたりのGDPはウクライナ3877ドルと極めて低い。ちなみにロシアは14302ドル(参考・日本46706ドル)である。ロシア編入を望む多数派のロシア系住民が「ロシアと一緒にやってゆくのが一番だ。クリミアでは年金はロシアの半分ガソリンはロシアより20%高い」(毎日新聞)と暮らし向きを強調する。民のかまどを気にしない為政者は排除されかねない。一方少数派であるクリミア・タタール人の民族自尊心はどうなるのだ。スターリンの弾圧にめげずにクリミアをわが故郷として今日まで生き抜いてきた。この民族自決の心もないがしろにはできない。
プーチン大統領の狙いが「クリミア制圧ではなくウクライナ新政権を揺さぶり欧州連合(EU)から遠ざけるのが目的」(毎日新聞)だとすれば、外交の余地は十分にある。速やかに進駐したロシア軍を撤退させることだ。ロシアの独立承認となれば欧米側の制裁の圧力が加わり緊張度がさらに増す。問題はこの紛争の決着にロシアが素直に「国連憲章」、国際法と米英露3ヶ国が結んだ「ブタペスト覚書」を守ることが何よりも必要である。いずれにもウクライナの主権と国境の尊重が明記されている。米欧州側は無効といいながらも今回の住民投票の結果の重みを勘案しクリミアを含めウクライナの国民に生活向上へ経済援助を惜しまないことだ。愚の骨頂たる戦争を避けるにはお互いの大局の判断を待つしかない。
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