安全地帯(412)
−信濃 太郎−
画家渡辺あきおさんと猫
画家・渡辺あきおさんに作家・こやま峰子さんの紹介で会った(11月6日)。渡辺さんは「ジャンボゴリラとこどもたち」で1993年度(平成5年)赤い靴文化賞特別賞を受賞している。その本の詩を書いたのがこやま峰子さんだ。そのほか「ねこの船」(自由国民社)などでも一緒に仕事をしている。会ったのは渡辺さんの個展が開かれている武蔵野市吉祥寺本町潤マンション103、画廊「リテイル」。約束の時間より15分ほど前に着いたので絵を拝見した。ほとんどの絵に猫がいる。描かれた猫が不思議と絵に溶け込んでいる。上手な俳句は季語が五・七・五の中に溶け込む。それと同じだ。猫を季語とすると猫に続く七・五、または五・七が川であり、雲であり建物であったりする。
俳人・寺井谷子さんは放浪俳人・尾崎放哉の「一日物云はず蝶の影さす」を引用して「『言葉』と『思い』。その中で『俳句が生まれる時』」と説いた。とすれば「『絵具』と『思い』。その中で『絵が生まれる時』」ということか。問題はその『思い』だ。
観ていると、ほとんどが女性客だ。渡辺さんの応対がまことに親切で優しい。またサービス精神旺盛だ。買い物をしたお客にはお土産をつける。こやまさんが現れると、ビールの缶を持ってきた。お茶よりアルコールの方がこやまさんにあうと知っているからであろう。渡辺さんの絵の全面に現れる、何とも言えない優しさはその人柄が現れたものであろう。30分ほどこやまさんと雑談して別れた。
考えてみると昨今、とみに出不精になっている私に刺激を与えるため渡辺あきおさんの絵を見せようと思ったのであろう。いただいた「渡辺あきお」の名刺には二匹の親子の猫の絵が描かれていた。翌日こやまさんからメールが届いた。個展を閉じた後のことが書かれていた。
『渡辺さんはじめ五人で駅の近くのお店で杯をかたむけ、東林間(こやまさんの自宅)にもどったのは11時。今月中旬にファミリーマートの「ありがとうの手紙」の選考が始まります。そして、最後の週の26日、27日に水戸の図書館で「たからものがいっぱい」(フレーベル館)の講演と原画展です』
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